作曲家、この一曲(ア行~カ行)

2010/04/17

コダーイ 叙情的ロマンス

ゾルタン・コダーイ(1882~1967)は、バルトークやドホナーニらとともに、ハンガリーを代表する作曲家であるが、1905年から、国内各地の村々を回り、民謡を収集(録音)し続け、『ハンガリーの民俗音楽(1937)』などの著作や論文を著したことでも知られる。

Kodaly

代表作には組曲『ハーリ・ヤーノシュ』(原曲はオペラ)や『ガランタ舞曲』、『無伴奏チェロソナタ』などがあるが、合唱曲(特に無伴奏児童合唱)に多くの作品が残されている。

今回ご紹介するチェロとピアノのための『叙情的ロマンス』は、彼の最初期の作品で、1898年、彼がブダペストのリスト音楽院で正式に音楽を学ぶ以前の、16歳のときに作曲された。
ピアノの伴奏にのせて朗々と歌うチェロの、ロマンティックな旋律が印象的な佳作である。

演奏時間は、およそ6分半

【お薦め盤】
アントニー・アルノーネ(Vc)、ティモシー・ラブレス(Pf)(ALBANY)

Kodalycd


【追記】
youtubeに演奏がアップされています。

2010/01/16

グラナドス 演奏会用アレグロ

近代スペインの作曲家エンリケ・グラナドス(1867~1916)は、アルベニスとともにスペインの民族主義楽派を確立した偉大な音楽家である。

Granados

マドリード音楽院やパリ音楽院で学び、優れたピアニストとしても活躍した彼は、作曲家としても歌劇や歌曲などを残しているが、作品の多くはソロピアノのための作品であり、ギターによる編曲・演奏でも知られる『スペイン舞曲集(作品37)』や祖国の画家ゴヤの絵画にインスピレーションを得た組曲『ゴィエスカス』(同名の歌劇も作曲)など、多くの傑作を残している。

しかし、第一次世界大戦最中の1916年、ニューヨークで歌劇『ゴィエスカス』の初演に立ち会い、イギリス経由で帰国の途中、乗船がドイツの潜水艦の魚雷攻撃を受けて沈没。彼も帰らぬ人となってしまった。享年48歳。

今回取り上げるピアノのための『演奏会用アレグロ(作品46)』は、1904年、マドリード音楽院による卒業課題曲コンテストで一等賞を獲得した作品で、現在、ピアノリサイタルでも、よく取り上げられる名曲のひとつである。

曲は、ギターを模したような右手の華麗なアルペジオが特徴的なスピリトーソの主部(#7つの嬰ハ長調!)に続いて、ショパン風のメランコリックなロ長調(#5つ)のポコ・メノ・モッソ、そしてト長調へとめまぐるしく変化を続けるソナタ形式による作品で、課題曲らしくピアノの超絶技巧がふんだんに盛り込まれた、非常に聴き応えのある作品となっている。

演奏時間はおよそ8分

作曲家の孫弟子にあたる名ピアニスト、ラローチャの演奏は他のピアノストの追随を許さない。

【お薦め盤】
アリシア・デ・ラローチャ(デッカ)

Granadoscd


【追記】
名曲でもあり、数多くの演奏がyoutubeに掲載されています。


2009/10/14

カルウォーヴィチ 交響詩『仮面舞踏会のエピソード』

最近、再評価の機運が高まっている近代ポーランドの作曲家であるミェチスワフ・カルウォーヴィチ※(1876~1909)は、20世紀初頭に、新しいポーランド国民音楽の創造をめざしたグループ「若きポーランド」に加わり、その中心的存在として活躍した人物である。※「カルウォヴィチ」とも呼ばれる。

Karlowicz


リトアニアの首都ヴィリニュスで生まれた彼は、ワルシャワ音楽院で作曲を学び、ドイツでは名指揮者アルトゥール・ニキシュに指揮法を師事。1901年に帰国した後は、ポーランド音楽協会の会員となり、弦楽オーケストラを創設し、指揮者として活躍。盟友シマノフスキらとともに、新しいポーランド音楽の創造・発展に尽力した。

しかし生来、健康面の不安があり、1907年にはワルシャワの喧騒を離れ、静養を兼ねて、ポーランドとスロヴァキアの国境に位置するタトラ山脈の小都市に移り住んだ。そこで作家、登山家、写真家としても活動しながら、連作交響詩『永遠の歌(作品10)』をはじめとする一連の交響詩を手がけるが、1909年、スキーをしている時に雪崩に遭遇し、非業の死を遂げる。

32年という短い生涯で、残された作品も決して多くないが、オーケストラ曲を中心に優れた作品を残していて、ドイツ留学中に作曲された『弦楽セレナードハ長調(作品2)』、「復活」の表題を持つ『交響曲ホ短調(作品7)』や『ヴァイオリン協奏曲イ長調(作品8)』など、みずみずしい叙情性と劇的要素を併せ持つ魅力的な作品群は、今後、オケのレパートリーとして定着する可能性は十分だ。

今回ご紹介するのは、最晩年の交響詩『仮面舞踏会のエピソード(作品14)』。リヒャルト・シュトラウスを髣髴(ほうふつ)とさせる大規模な作品で、ホルンの咆哮が印象的な冒頭部分から、いきなり物語のど真ん中に引きずり込まれた錯覚に陥る。ヴァイオリンが提示する主要主題は、個性的で強烈な芳香に満ちている。ゴージャスで色彩的な管弦楽法、眼前で物語が繰り広げられているような劇的な展開は、まさに天才の筆致としか言いようがない。作曲の由来は不明だが、1908年の秋に作曲に取りかかったところ、翌年、作曲家の急逝により未完のまま残され、同じポーランドの作曲家フィテルベルクの補筆により完成、1914年2月にワルシャワで初演された。

演奏時間は約29分

【お薦め盤】
アントニー・ヴィット指揮、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団(ナクソス)

Karlowiczcd


【追記】
youtubeに、いくつか音源が掲載されています。

2009/10/10

アイネム 管弦楽組曲『ダントンの死』

1947年のザルツブルク音楽祭において、名指揮者フェレンツ・フリッチャイによって、あるオペラが初演され、センセーションを巻き起こし、それまでほとんど無名だった音楽家が、ほぼ一夜で世界的な名声を得ることになった。

それはオーストリアの作曲家、ゴットフリート・フォン・アイネム(1918~1996)によって作曲された歌劇『ダントンの死(作品6)』の初演時の出来事である。

Einem

スイスのベルンでオーストリア軍人の旧家で生まれた彼は、兵役後ベルリンに出て、1938年からはベルリン国立歌劇場のコレペティートルとなり、指揮者としての研鑽を積む。その後、ボリス・ブラッハーに作曲を学び、1944年にはドレスデン国立歌劇場へ移るが、このころ委嘱を受けてドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーの戯曲に基づくオペラの作曲を手がけ、1946年に全2幕からなるオペラを完成させた。それが彼の出世作となったこの『ダントンの死』である。

その後、彼はこのオペラから4曲からなる組曲をつくり、1949年にバーデン=バーデンで初演された。明快で躍動感あふれるリズム、色彩豊かな管弦楽法など親しみやすい曲調が特徴で、今日、彼の最も有名な作品のひとつとなっている。特に第4曲でスウィングするようなリズムに乗って奏でられる明るいメロディーは、きわめて新鮮で躍動感に富み、魅力的である。

なお、彼は生涯にわたり、リヒャルト・シュトラウスやストラヴィンスキーらの影響の下に、『ダントンの死』を含む4つの歌劇や5曲のバレエ音楽、管弦楽曲や協奏曲などの分野で優れた作品を残している。1950年代には12音技法による作曲も試みるが、やがて明確な調性音楽へ回帰。ウィーン音楽院の教授やオーストリア音楽アカデミーの会長を歴任するなど、長きにわたりオーストリア音楽界に重きをなした。

演奏時間はおよそ13分

【お薦め盤】
コルネリウス・マイスター指揮、ウィーン放送交響楽団(オルフェオ)

Einemcd


【追記】
youtubeに映像が掲載されていましたが、削除されてしまいました。(2012年3月加筆)

2009/09/21

カサド 無伴奏チェロ組曲

日本ともゆかりの深かった、20世紀スペインを代表するチェリストのひとり、ガスパール・カサド(1897~1966)は、作曲家として協奏曲や室内楽曲などを残しているが、現在知られている作品は決して多くはない。

Cassado

スペインのバルセロナに生まれた彼は、幼少期に同郷の名チェリストであるパブロ・カザルスに認められ、彼のもとで学び、やがて欧米各地で名を馳せるようになる。エルガーやレスピーギ、メンゲルベルクなど著名な音楽家とも交流が深く、プフィッツナーの『チェロ協奏曲(作品42)』は、彼に捧げられている。

彼の作品で、最もよく知られているのは、1920年にチェロとピアノのために作曲された『愛の言葉』であろうが、今回取り上げる『無伴奏チェロ組曲』も、多くのチェリストに愛奏されている作品で、1926年に作曲され、恩師カザルスに献呈されている。

全体は、「プレリューディオ・ファンタジア」「サルダーナ」「インテルメッツォ・エ・ダンツァ・フィナーレ」の3つの楽章からなり、いずれもスペイン情緒に満ちあふれた、情熱的な音楽が展開される。

演奏時間は約16分

【お薦め盤】
林 裕(ライブノーツ)

Cassazocd_2


【追記】
youtubeにも、数多くの演奏が掲載されています。


2009/08/04

アーノルド 序曲『ピータールー』

マルコム・アーノルド(1921~2006)は、映画『戦場にかける橋』や『汚れなき瞳』などの音楽で知られる現代イギリスの人気作曲家である。

Arnold

音楽好きの両親の影響で、幼いころからさまざまなジャンルの音楽に親しんだ彼は、王立音楽大学でトランペットの演奏に磨きをかけると同時に作曲を学ぶ。卒業後、ロンドン・フィルに入団し、数年後には首席奏者に抜擢されるほどの実力の持ち主であった。

1948年に同楽団を退団すると、本格的に作曲家の道を歩み出し、9曲の交響曲をはじめ、バレエ音楽、協奏曲、室内楽曲など、あらゆる分野で多くの作品を発表した。彼の作風は、クラシカルな形式を守りながら、親しみやすいメロディー、よく鳴るオーケストレーションなどが特徴で、幅広い人気を獲得している。

今回取り上げる序曲『ピータールー(作品97)』は、1967年、英国労働組合会議100周年を記念し委嘱された作品で、世に言う「ピータールーの虐殺」を、ほぼ時系列で描いたもの。

1819年4月16日、イギリスのマンチェスター郊外のセント・ピーターズ・フィールズで行われた集会に集まった約6万人といわれる民衆に対して、騎馬警察隊が発砲、11人が死亡、600人以上が負傷するという惨事となった。

曲は冒頭、穏やかで荘厳なハ長調の旋律が弦楽器で奏される。やがて音楽は、騎馬隊を表す2台のスネアドラムの登場とともに不穏な空気に変わり、管楽器の乾いた咆哮(ほうこう)や打楽器の容赦のない連打等、異常な緊張感のうちに曲が展開する。銅鑼の一撃で曲は静まり返り、広がる周囲の惨状・・・。やがてオーボエのソロがかすかな希望のように冒頭の旋律の一節を奏で始める。コーダでは、全楽器が「正義」のカンタービレを力強く歌い上げ、最高潮に達するうちに曲は閉じられる。

ピストルや掃除機(4台!)が登場する『グランド・グランド・フェスティバル序曲(作品57)』や「ホフナング音楽祭」のための作品などウイットに富んだ作品で知られる彼の、違った一面を見ることができる傑作だと思う。

演奏時間はおよそ10分

【お薦め盤】
ラモン・ガンバ指揮、BBCフィルハーモニック(シャンドス)

Arnoldcd


【追記】
youtubeに映像が掲載されました。(2010年2月1日加筆)
※演奏は異なります。

2009/07/25

アレンスキー 歌劇『ヴォルガ川上の夢』序曲

モスクワ楽派を代表する作曲家であるアントン・アレンスキー(1861~1906)は、モスクワ音楽院の作曲家教授として、ラフマニノフやスクリャービンをはじめ多くの逸材を育てた教育者としても名高い。

Arensky

作曲家としては、長い間「チャイコフスキーの亜流」と言われ続け、一部の作品を除いて正当な評価を受けることがなかった。ロシア特有の叙情性と西洋風の洗練された作風に、チャイコフスキーの影響が認められるものの、単純にひとくくりにして一等低く見るのは、全くもって誤った考えであるとしか思えない。

かねてより評価が高かった『ピアノ三重奏曲第1番ニ短調(作品32)』や『組曲第2番「シルエット」(作品23)』以外にも注目すべき作品が数多くあり、今回ご紹介する歌劇『ヴォルガ川上の夢(作品16)』序曲も、そうした隠れた名曲のひとつ。

この歌劇は4幕6場からなる大規模な作品で、彼のこの分野における代表作である。劇作家アレクサンドル・オストロフスキーの『ヴォイエヴォーダ』をもとに作曲者自身が台本を書いたもので、1891年にモスクワのボリショイ劇場で初演された。

冒頭で演奏される序曲は、総奏で提示される雄大なハ長調のマエストーソの主題と、それに続いて、23小節目からチェロとヴァイオリンによって奏される表情豊かな変ホ長調のアレグロの副主題が極めて印象的である。曲はこの2つの主題がさまざまな形に変容しなかがら展開する。イ短調のロシア風エピソードを経て、コーダでは冒頭のマエストーソ主題により、感動的な盛り上がりを形づくる。美しいメロディーや華麗なオーケストレーションは、彼の卓越した才能を証明するに余りあるもの。

今日、再評価が著しい作曲家のひとりであり、師匠のリムスキー=コルサコフから、「いずれ忘れ去られるであろう」とまで言われた彼ではあるが、その予言は的はずれだったと考えてよかろう。

演奏時間はおよそ7分

【お薦め盤】
ワシーリー・シナイスキー指揮、BBCフィルハーモニック(シャンドス)

Arenskycd


【追記】
ようやくyoutubeに、音源が掲載されました。


2008/05/03

アルベニス ピアノ協奏曲第1番(幻想的協奏曲)

イサーク・アルベニス(1860~1909)は、スペインが生んだ大作曲家であり、近代民族主義楽派の代表的存在である。

Albeniz

幼少期から天才ピアニストとして知られ、マドリード音楽院で学んだ後、その優れたピアノの腕前で世界各地を放浪したといわれる。その後、ライプツィヒ音楽院やブリュッセル音楽院で学んだとされるが、世界各地を演奏旅行で飛び回る日々であった。23歳で結婚した後、しばらくしてパリに移り、49歳で亡くなるまでフランスを本拠に活躍した。

彼は、歌劇や管弦楽曲なども若干数残しているが、作品の多くはピアノ曲で、最高傑作との呼び声高い組曲『イベリア』をはじめ、スペイン情緒豊かな印象主義的作風が特徴で、現在でも演奏会でよく取り上げられる。とりわけギター界では、なくてはならない存在であるが、彼自身はオリジナルのギター曲を作曲しておらず、あくまで後世の編曲である。それほど彼のピアノ曲は、ギターの奏法を彷彿(ほうふつ)とさせるものがある。

今回ご紹介するのは、『ピアノ協奏曲第1番イ短調(作品78)』で、1887年に初演された。全体は3つの楽章からできていて通常の協奏曲形式に従うが、第2楽章はアンダンテと、スケルツォに相当するプレストの2部で構成される。アルベニス特有の民族主義的要素は少なく、むしろシューマンやグリーグの協奏曲のようなロマン派風協奏曲となっていて、特に、第1楽章全般に漂うメランコリックな情緒は、大きな聴きどころである。

なおこの曲のオーケストラパートは長年行方不明となっていたが、1967年に発見され、再び演奏されるようになった。

フランス在住の名ピアニスト、チッコリーニの共感あふれる演奏を第一にお薦めする。

演奏時間は約25分

【お薦め盤】
アルド・チッコリーニ(Pf)、エンリケ・バティス指揮、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(Alfa)

Albenizcd


【追記】
youtubeに音源が掲載されました。(2013年8月18日加筆)

2008/02/16

大澤壽人 ピアノ五重奏曲

近年、再評価が著しい大澤壽人(おおざわ・ひさと 1907~1953)は、貴志康一とともに関西が生んだ偉大な作曲家である。

神戸市で生まれた彼は、幼少期に宣教師などから音楽を学ぶ。関西学院中学部から同校高等商業学部に進み、在学中はピアノ・男声合唱に親しむとともに作曲を手がける。

1930年に同校を卒業し、渡米。ボストン大学やニューイングランド音楽学校でピアノや作曲の研鑽を積むと同時に、ボストン交響楽団などを指揮し自作を発表。その後、フランスに渡り、エコールノルマル音楽院でポール・デュカスやナディア・ブーランジェに師事し、『交響曲第2番』などの作品を発表し高い評価を得るなど、八面六臂の活躍をした。

1936年に帰国し、神戸女学院で教鞭を執る傍ら、ジャズやセミ・クラシック系の音楽や劇伴などの分野で活躍したが、脳溢血のため46歳の若さで急逝した。

彼の作風は、留学先のアメリカやフランスで培った、モダンなハーモニーや洗練された管弦楽法の中にも、日本的な要素が、ほのかに感じられるのが特徴であり、他に替え難い魅力となっている。

今回ご紹介する『ピアノ五重奏曲』は、1933年、ボストン留学時代に作曲・初演された3つの楽章からなる作品で、全編にわたり、メロディに4分音が巧みに取り入れられていて、その独特の響きは、雅楽や浄瑠璃など日本の伝統音楽を連想させる。まだ20歳代半ばであった作曲家の意欲作である。

なお彼には、他にも代表作とされる『交響曲第3番』や『ピアノ協奏曲第2番』などがCD化されているので、ぜひ一度、お聴きいただきたい。

演奏時間はおよそ32分

【お薦め盤】
藤井由美(Pf)、マイ・ハート弦楽四重奏団(HM.taso)

Ohzawacd


2007/10/27

アッテルベリ ヴェルムランド狂詩曲

アルヴェーンやステンハンマルに続く、スウェーデンの代表的作曲家であるクルト・アッテルベリ(1887~1974)は、9曲の交響曲をはじめ協奏曲やオペラなど数多くの作品を残している。

Kurtatterberg1

彼が世界に名を知られることになったきっかけは、アメリカのレコード会社が主催した「シューベルト没後100年作曲コンクール」に匿名で応募した作品(現在の『交響曲第6番』)が第1位を獲得し優勝したこと。彼は1万ドルの賞金を得て、良くも悪くも一躍「時の人」になったのだ。

もちろん交響曲や協奏曲などにも素晴らしい曲があり、いずれここでも取り上げたいが、今回紹介するのは、1933年にスウェーデン放送協会からの委嘱により作曲された『ヴェルムランド狂詩曲(作品36)』である。

この曲は、1909年に女性として初めてノーベル文学賞を受賞したスウェーデンの作家、セルマ・ラーゲルレーヴ(1858~1940)の75歳の誕生日のために書かれ、同日、生中継された。彼女がいかに喜んだかは、想像に難くない。

曲は、冒頭、弦楽合奏により、スウェーデンの有名な民謡『ヴェルムランドの歌』に基づく短調のテーマを厳かに奏でる。やがて舞曲風の特徴あるモチーフにより長調に転じてにぎやかに盛り上がるが、やがてまた冒頭のテーマに回帰して、静かに曲を閉じる。

全体を流れる寂寥(せきりょう)感、北欧の薄暗い空、冷たい空気を思わせるような雰囲気は、ロマンティックで夢のように美しい。

演奏時間は約9分

【お薦め盤】
ロジャー・エップル指揮、ベルリン放送交響楽団(CPO)

Atterbergcd


【追記】
youtubeに音源が掲載されています。(2009年2月1日、2011年7月19日、2012年1月20日加筆)

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