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2011年7月

2011/07/30

奇跡のカウンターテナー、フィリップ・ジャルスキーを聴く

今日、フィリップ・ジャルスキー&アンサンブル・アルタセルセの公演を聴くため、いずみホール(大阪市)に出かけた。


Izumihall


僕がフィリップ・ジャルスキーのリサイタルを聴くのは今回で3回目となる。過去、何度か彼の演奏を紹介してきたが、聴くたびに新たな感動を与えてくれる素晴らしい音楽家だ。※彼の経歴については、こちらのHPをご覧いただきたい。

前回は、古楽アンサンブルのラルペッジャータとの来日で、ユーモアを交えた多彩なプログラムでわれわれを楽しませてくれたが、今回は彼自身が率いるバロック・アンサンブル「アルタセルセ」と、得意のヴィヴァルディを披露するというのだから聞き逃すわけにはいかない。

会場となったいずみホールは、正面にパイプオルガンを備えた821席のホールで、今回の規模のアンサンブルを聴くには最適の空間だ。比較的新しい(といっても20年を超える)施設だが、なんとなく古きヨーロッパの伝統がただよう雰囲気を持つホールだ。

今回は、第1部が「サクロ(神聖)」と題され宗教曲2曲と協奏曲1曲を、そして休憩を挟んだ後半第2部は「プロファノ(世俗)」と題され、歌劇やオラトリオのアリア4曲と協奏曲1曲というプログラムで構成された。

それにしても、ジャルスキーの歌は素晴らしいの一言に尽きる。アレグロの曲におけるコロラトゥーラの巧みな歌い回しもさることながら、彼の最大の魅力は、ゆるやかな曲における表現力であると僕は常々考えている。今回、例えば、第1部の最後で演奏された『ニシ・ドミヌス(RV608)』の第4曲アンダンテにおいて、弦楽器がバッハの『マタイ受難曲』の冒頭を思わせるフレーズを奏でる中、静かに歌い出し、声色を変化させながら音階を上昇していく瞬間の美しさは例えようもない。

※『ニシ・ドミヌス』から第4曲


どこまでも高貴で神聖でありながら、同時に官能的でもあるという美の本質に通じるかのような彼の表現力は、これまでのカウンターテノールにない魅力である。(しかも、まだ彼は33歳!)

おそらく今回、会場を訪れた聴衆の多くは知らなかった(さほど期待していなかった)のではないか。カウンターテノールの魅力を、そしてフィリップ・ジャルスキーという恐るべき才能を・・・。そして思いがけない衝撃と感動を体験することになったのではないか。聴衆の反応がそれを物語っていたように思う。

なお、アンコールでは2曲が演奏されたが、僕はとりわけ伝説のカストラート、ファリネッリ(1705~1782)のために書かれた、ポルポラの歌劇『ポリフェーモ』のアリア「偉大なジュピターよ」に感銘を受けた。最も難しい技術のひとつとされるメッサ・ディ・ヴォーチェを、あれほど魅惑的に表現できる歌手が現在、他にいるだろうか。



さらに今回、僕にとって驚きだったのは、アンサンブル・アルタセルセの演奏だ。斬新かつ繊細、優れた技術に裏打ちされた豊かで多彩な音色、自らが演奏を楽しんでいるという雰囲気、どれをとっても申し分なく、今まで聴いた古楽器アンサンブルの中でも、最高レベルだと評価したい。

特に、第1ヴァイオリンとヴィオラ・ダモーレを担当したアレッサンドロ・タンピエーリの熱演には、聴衆もやんやの大喝采だった。(近くで見ると、意外と若い・・・)


Jarousskyleaf


今日は、すべてにおいて最高の音楽を味わうことができた公演だった。今回のツアーでは、仙台公演が中止を余儀なくされたそうだが、多くの海外のアーティストが来日を取りやめる事態が続く中、こうして素晴らしい演奏を聴かせてくれた彼らと、プロモーターをはじめとする関係者のご尽力に感謝申し上げたい。

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