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2011年6月

2011/06/25

『クラシック音楽作品名辞典』(第4版)に期待する

最近、『クラシック音楽作品名辞典』』の改訂版となる第3版が発売されたので、さっそく購入することにした。

この辞典は、クラシック音楽作曲家の作品名、作曲年、楽器編成などのデータが網羅されていて、僕のようなクラシック音楽愛好家にとっては、欠くべからざる存在となっている。例えば、CDなどの蒐集の際に、ある作曲家の作品に興味を抱いて、その人の他の曲も聴いてみたいと思ったときなど、容易に調べることができるのだ。


Classical_deta_book_2


僕は十数年前、自分の持っているCDをパソコンでデータベース化しようとして挫折した経験があり、その代わりとして、この辞典の初版本(1993年)を購入し、持っているCDの曲名に赤鉛筆で印をつけたり、新たな情報を書き加えたりしている。すでにCDを持っているかどうかを確認するときなどにも、非常に重宝している。

しかし、不満もあった。

1 記載内容の誤り
「作曲年」や「作品番号」、「作品の調号」に多くの誤りが見受けられること。

2 日本人作曲家は一切記載なし
まえがきに「今回全面的に省いた」と記されているが、理由が明記されていない。本来であれば省く理由は見当たらない。かつて、『日本の作曲20世紀』(音楽の友社刊)という素晴らしい本があったように、別冊でもよいので出すことはできないのだろうか。

3 取り上げられていない作曲家が多い 
特にイギリスの作曲家、例えばスタンフォードパリーラターなどは、十分に取り上げられる価値があるはずだ。  

4 索引が充実しているように見えるが、利用価値は高くない
少なくとも僕は、ほとんど使うことはなかった。

やがて、1996年に第2版が「全面改訂版」と銘打って発売されたとき、上記のような不満のいくつかが解消されていると思い、さっそく購入してみたが全くの期待はずれに終わった。期待が大きかった分、失望も深かった。
確かに多くのデータが加筆されてはいたが、初版における基本的な誤りが修正されていなかったからだ。一例を挙げてみよう。

シューマンの『交響曲ト短調』、通称「ツヴィッカウ交響曲」と呼ばれている作品について、「3楽章完成、第4楽章スケッチ」と記載されている。初版時よりも記述が加筆されているが、基本的な誤りが修正されていない。ここは「2楽章まで完成」とするのが正しい。

また、かつてシューベルトの「第7交響曲」と呼ばれた『交響曲ホ長調(D.729)』について、「ピアノ譜のスケッチのみが現存し~ 」と記されているが、正しくはピアノ譜ではなく、オーケストラの総譜で残されている。(冒頭の序奏部分を除いて主旋律および伴奏の数パート、箇所によっては1パートのみで最後まで書き進められた)

こうした理由から、結局、この第2版は、ほとんど新品のまま放置状態となった。

そして今回、十数年の時を経て第3版の出版である。(発売は2009年6月15日となっている)
改訂版の主な特長としては、「現代の作曲家を中心に新たに40名を追加した」ことや「演奏家や指揮者などに協力を得て内容を充実させた」云々となっている。

さっそく期待に胸を膨らませて、いくつかチェックしてみたが、またもや期待外れに終わってしまった。何より、上記のシューマンやシューベルトなどの誤りが一向に修正されていない。これはデータチェックの甘さ以外の何物でもない。

また、新たな作曲家が40名が追加された一方で、38名の作曲家が削除されていること。日本人作曲家を省いた「言い訳」が本書の冒頭に記載されているが、決して納得のいく説明になっていない点など残念極まりない。
この本の定価は約5千円、決して安い買い物ではない。もちろん、内容が価格に見合っているのであれば何も言うことはないのだが・・・。

結局、僕は、これまでどおり初版本を使い続けることになるだろう。朱書きの書き込みを新たに移し替える労力に見合うだけの価値があるとは、到底思えないからだ。

出版社には猛省を促したい。次回(第4版)の出版が何年先になるかは分からないが、抜本的な改訂に取り組んでほしい。何といっても、唯一無二の貴重な存在なのだから。


【参考文献】
『クラシック音楽作品名辞典』 (井上和男編、三省堂刊)


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