« 2009年9月 | トップページ | 2009年12月 »

2009年10月

2009/10/17

柴田敬一の「ライツ・アンド・シャドウズ」

今回は、僕が日ごろ大切にしているアルバム「ライツ・アンド・シャドウズ」をご紹介したい。

このCDは、ピアニストや作編曲家、音楽プロデューサーとして活躍した「ケイ柴田」こと柴田敬一(しばた・けいいち、1959~2009)のデビュー・アルバムである。

彼は長野市の出身。3歳からクラシックピアノを学び、高校卒業後、東京に出てジャズ・ピアニストとして活動をはじめたが、1982年に渡米し、アトランタやニューヨークを拠点に世界の一流ミュージシャンらと共演を続けた。

1984年に帰国後、デビュー作となるピアノソロアルバム「ライツ・アンド・シャドウズ」を発表し、その日本人の感性に根ざした叙情味あふれる音楽は大いに注目されることとなった。

その後も、ピアニストやキーボーディストとして「Kei SHIBATA JAZZ BAND」、二胡やヴァイオリンを加えたミュージック・ユニット「アジア・ルネッサンス」を率いての全国各地でのライブ活動、ハービー・ハンコックらのツアー参加、中島美嘉のレコーディング等々、幅広い活躍を続けていたが、今年、8月25日に過労(解離性大動脈瘤)のため急逝。享年50歳。

このアルバムは、僕がジョージ・ウィンストンに夢中だったころに日本のSHI-ZENレーベル(ポリドール系)から発売された。偶然、京都のショップで手に取り、その美しいジャケットに魅かれて購入して以降、僕の大切な宝物となっている。

このアルバムには、「ダンシング・リーブズ」「幼心への憧憬(しょうけい)」をはじめ9曲が収録され、いずれの曲も日本人の琴線にふれる名曲揃いであるが、特に僕は7曲目の「せせらぎ」を聴くたびに、深く心を揺さぶられる。

なお彼は、このアルバムに続いて、「ウインド・エコー」を発表。以降「アジア・ルネッサンス」(1997)、テレビ番組「悠久の大地インド」のサウンドトラック盤「ムーン・チャイルド」(1999)などを発表している。

働き盛りであった彼の、突然の逝去が残念でならない・・・。

【お薦め盤】

「ライツ・アンド・シャドウズ」(柴田敬一)

1985年発売 ※現在は廃盤

Shibatacd


2009/10/14

カルウォーヴィチ 交響詩『仮面舞踏会のエピソード』

最近、再評価の機運が高まっている近代ポーランドの作曲家であるミェチスワフ・カルウォーヴィチ※(1876~1909)は、20世紀初頭に、新しいポーランド国民音楽の創造をめざしたグループ「若きポーランド」に加わり、その中心的存在として活躍した人物である。※「カルウォヴィチ」とも呼ばれる。

Karlowicz


リトアニアの首都ヴィリニュスで生まれた彼は、ワルシャワ音楽院で作曲を学び、ドイツでは名指揮者アルトゥール・ニキシュに指揮法を師事。1901年に帰国した後は、ポーランド音楽協会の会員となり、弦楽オーケストラを創設し、指揮者として活躍。盟友シマノフスキらとともに、新しいポーランド音楽の創造・発展に尽力した。

しかし生来、健康面の不安があり、1907年にはワルシャワの喧騒を離れ、静養を兼ねて、ポーランドとスロヴァキアの国境に位置するタトラ山脈の小都市に移り住んだ。そこで作家、登山家、写真家としても活動しながら、連作交響詩『永遠の歌(作品10)』をはじめとする一連の交響詩を手がけるが、1909年、スキーをしている時に雪崩に遭遇し、非業の死を遂げる。

32年という短い生涯で、残された作品も決して多くないが、オーケストラ曲を中心に優れた作品を残していて、ドイツ留学中に作曲された『弦楽セレナードハ長調(作品2)』、「復活」の表題を持つ『交響曲ホ短調(作品7)』や『ヴァイオリン協奏曲イ長調(作品8)』など、みずみずしい叙情性と劇的要素を併せ持つ魅力的な作品群は、今後、オケのレパートリーとして定着する可能性は十分だ。

今回ご紹介するのは、最晩年の交響詩『仮面舞踏会のエピソード(作品14)』。リヒャルト・シュトラウスを髣髴(ほうふつ)とさせる大規模な作品で、ホルンの咆哮が印象的な冒頭部分から、いきなり物語のど真ん中に引きずり込まれた錯覚に陥る。ヴァイオリンが提示する主要主題は、個性的で強烈な芳香に満ちている。ゴージャスで色彩的な管弦楽法、眼前で物語が繰り広げられているような劇的な展開は、まさに天才の筆致としか言いようがない。作曲の由来は不明だが、1908年の秋に作曲に取りかかったところ、翌年、作曲家の急逝により未完のまま残され、同じポーランドの作曲家フィテルベルクの補筆により完成、1914年2月にワルシャワで初演された。

演奏時間は約29分

【お薦め盤】
アントニー・ヴィット指揮、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団(ナクソス)

Karlowiczcd


【追記】
youtubeに、いくつか音源が掲載されています。

2009/10/10

アイネム 管弦楽組曲『ダントンの死』

1947年のザルツブルク音楽祭において、名指揮者フェレンツ・フリッチャイによって、あるオペラが初演され、センセーションを巻き起こし、それまでほとんど無名だった音楽家が、ほぼ一夜で世界的な名声を得ることになった。

それはオーストリアの作曲家、ゴットフリート・フォン・アイネム(1918~1996)によって作曲された歌劇『ダントンの死(作品6)』の初演時の出来事である。

Einem

スイスのベルンでオーストリア軍人の旧家で生まれた彼は、兵役後ベルリンに出て、1938年からはベルリン国立歌劇場のコレペティートルとなり、指揮者としての研鑽を積む。その後、ボリス・ブラッハーに作曲を学び、1944年にはドレスデン国立歌劇場へ移るが、このころ委嘱を受けてドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーの戯曲に基づくオペラの作曲を手がけ、1946年に全2幕からなるオペラを完成させた。それが彼の出世作となったこの『ダントンの死』である。

その後、彼はこのオペラから4曲からなる組曲をつくり、1949年にバーデン=バーデンで初演された。明快で躍動感あふれるリズム、色彩豊かな管弦楽法など親しみやすい曲調が特徴で、今日、彼の最も有名な作品のひとつとなっている。特に第4曲でスウィングするようなリズムに乗って奏でられる明るいメロディーは、きわめて新鮮で躍動感に富み、魅力的である。

なお、彼は生涯にわたり、リヒャルト・シュトラウスやストラヴィンスキーらの影響の下に、『ダントンの死』を含む4つの歌劇や5曲のバレエ音楽、管弦楽曲や協奏曲などの分野で優れた作品を残している。1950年代には12音技法による作曲も試みるが、やがて明確な調性音楽へ回帰。ウィーン音楽院の教授やオーストリア音楽アカデミーの会長を歴任するなど、長きにわたりオーストリア音楽界に重きをなした。

演奏時間はおよそ13分

【お薦め盤】
コルネリウス・マイスター指揮、ウィーン放送交響楽団(オルフェオ)

Einemcd


【追記】
youtubeに映像が掲載されていましたが、削除されてしまいました。(2012年3月加筆)

ラヴェル ピアノ三重奏曲

近代フランスを代表する作曲家のひとりであるジョゼフ=モーリス・ラヴェル(1875~1937)は、母方がスペイン系の血を引くバスク人であり、作曲家として生きる彼のアイデンティティを形成する上において大きな拠り所となった。

Ravel2

作風は、同じ印象主義と呼ばれる作曲家であるドビュッシーの作品に比べ、より知性的でアルカイックな透明感が特徴である。

代表作としては、『ダフニスとクロエ』『ラ・ヴァルス』『ボレロ』などのバレエ音楽や2曲のピアノ協奏曲などがあり、「オーケストラの魔術師」と呼ばれた彼の卓越した管弦楽法を存分に堪能することができるが、室内楽曲やピアノ曲、歌曲の分野においても優れた仕事を数多く残している。

今回取り上げる『ピアノ三重奏曲イ短調』は、第1次世界大戦が勃発した1914年、トラック運転手として兵役に従事していた彼が、死と隣り合わせの戦地で書き上げた室内楽の傑作であり、4つの楽章にわたり、生まれ故郷であるバスク地方の民族的色彩やオリエンタリズムの横溢がきわめて美しい。

演奏時間はおよそ25分

【お薦め盤】
クララ・ボナルディ(Vn)、イヴァン・シフォリュー(Vc) 、ノエル・リー(Pf) (ACCORD)

Ravelcd


【追記】
名曲でもあり、数多くの演奏がyoutubeに掲載されています。
※お薦め盤とは、演奏が異なります。

« 2009年9月 | トップページ | 2009年12月 »

2016年10月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

Twitter

無料ブログはココログ

Amazon ウィジェット

  • ウィジェット