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2009年7月

2009/07/25

アレンスキー 歌劇『ヴォルガ川上の夢』序曲

モスクワ楽派を代表する作曲家であるアントン・アレンスキー(1861~1906)は、モスクワ音楽院の作曲家教授として、ラフマニノフやスクリャービンをはじめ多くの逸材を育てた教育者としても名高い。

Arensky

作曲家としては、長い間「チャイコフスキーの亜流」と言われ続け、一部の作品を除いて正当な評価を受けることがなかった。ロシア特有の叙情性と西洋風の洗練された作風に、チャイコフスキーの影響が認められるものの、単純にひとくくりにして一等低く見るのは、全くもって誤った考えであるとしか思えない。

かねてより評価が高かった『ピアノ三重奏曲第1番ニ短調(作品32)』や『組曲第2番「シルエット」(作品23)』以外にも注目すべき作品が数多くあり、今回ご紹介する歌劇『ヴォルガ川上の夢(作品16)』序曲も、そうした隠れた名曲のひとつ。

この歌劇は4幕6場からなる大規模な作品で、彼のこの分野における代表作である。劇作家アレクサンドル・オストロフスキーの『ヴォイエヴォーダ』をもとに作曲者自身が台本を書いたもので、1891年にモスクワのボリショイ劇場で初演された。

冒頭で演奏される序曲は、総奏で提示される雄大なハ長調のマエストーソの主題と、それに続いて、23小節目からチェロとヴァイオリンによって奏される表情豊かな変ホ長調のアレグロの副主題が極めて印象的である。曲はこの2つの主題がさまざまな形に変容しなかがら展開する。イ短調のロシア風エピソードを経て、コーダでは冒頭のマエストーソ主題により、感動的な盛り上がりを形づくる。美しいメロディーや華麗なオーケストレーションは、彼の卓越した才能を証明するに余りあるもの。

今日、再評価が著しい作曲家のひとりであり、師匠のリムスキー=コルサコフから、「いずれ忘れ去られるであろう」とまで言われた彼ではあるが、その予言は的はずれだったと考えてよかろう。

演奏時間はおよそ7分

【お薦め盤】
ワシーリー・シナイスキー指揮、BBCフィルハーモニック(シャンドス)

Arenskycd


【追記】
ようやくyoutubeに、音源が掲載されました。


ラター 子どもたちのミサ曲

ジョン・ラター※(1945~  )は、現代イギリスの作曲家で、合唱指揮者としても活躍している音楽家で、彼の作品は、その親しみやすい作風から、世界中の合唱団でさかんに取り上げられている。※日本では「ラッター」とも呼ばれる。

Rutter

ロンドンで生まれた彼は、幼いころから聖歌隊で教会音楽に親しみ、ケンブリッジ大学のクレア・カレッジで音楽を学び、卒業後は母校で教鞭を執る。合唱曲の他にも、(子どものための)歌劇やピアノ協奏曲、テレビ番組の音楽なども作曲しているが、作曲の中心は、やはり宗教合唱曲であろう。

明るく美しいメロディーやハーモニーを特徴とする彼の作品は、世界中で多くのファンを魅了しているが、今回取り上げる『子どもたちのミサ曲(Mass of the children)』は、2002年に作曲され、翌年にニューヨークのカーネギーホールで初演された独唱と合唱のための作品。

幼いころ、ブリテンの『戦争レクイエム』の世界初録音(作曲者自身の指揮による)に参加した彼は、児童合唱と大人の合唱を取り入れたその作風に感銘を受け、自分も同様のスタイルで、喜びにあふれたミサ曲を書きたいと思ったことがきっかけとなっている。

曲は通常のミサ曲の形式に従うが、児童合唱、時には独唱により英語によるテクストが挿入される。
特に第3曲「サンクトゥス&ベネディクトゥス」の管楽器とハープが奏でる3連符に乗って歌われる夢見るようなメロディーや終曲「ドナ・ノービス・パーチェム」の合唱の温かな響きはまるで彼岸を見るようでもあり、聴く者に忘れがたい印象を残す。

演奏時間はおよそ37分

【お薦め盤】
ティモシー・ブラウン指揮、クレア室内アンサンブル、ケンブリッジ・クレア・カレッジ聖歌隊、ファーナム・ユース合唱団ほか(ナクソス)

Ruttercd


【追記】
youtubeにも数多くの映像が掲載されています。※この映像は、第3曲「サンクトゥス&ベネディクトゥス」です。


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