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2008/08/16

尹伊桑 チェロ協奏曲

韓国を代表する作曲家である尹伊桑(ユン・イサン、1917~1995)は、日本の統治時代の朝鮮に生まれ、後年はドイツを中心に活躍した音楽家である。

Isang_yun

大阪でチェロを、その後東京で池内友次郎に対位法を学ぶ。その後、朝鮮の独立運動に関わり逮捕される。太平洋戦争後、プサンやソウルで教鞭を執るが、1956年からはパリ音楽院やベルリン高等音楽学校で学び、作曲家として活動を始める。

しかし、北朝鮮に入国したことにより、1967年、西ベルリンにおいてスパイ容疑でKCIA(大韓民国中央情報部)に逮捕、ソウルに強制送還され、厳しい拷問を受ける。このことにストラヴィンスキーやダラピッコラをはじめ多くの音楽家が抗議し、2年間の服役の後、釈放され西ドイツに帰化する。その後、二度と祖国の土を踏むことはなかった。

彼の音楽は、朝鮮の伝統音楽の要素を前衛的な技法の中に融合・昇華させるという独自の特徴を持ち、歌劇や交響曲、室内楽曲など数多くの作品を残している。よく知られている作品には、管弦楽のための『ムアク(舞踏幻想曲)』や光州事件の犠牲者を追悼するために作曲された『光州よ、永遠に』、無伴奏オーボエのための『ピリ』などがある。

今回取り上げる『チェロ協奏曲』は、フランス文化省の委嘱により、1975年から翌年にかけて作曲された彼の自伝的作品である。

この曲は牢獄での体験という、音楽以外の概念によって形づくられている。私の体験を表現するのにチェロは最適な楽器だった。生死を分かつ場面に直面した体験を、頭の中でどう処理すればよいのかということを、この曲の中で詳細に描写したつもりだ。(尹伊桑)

曲は急緩急の3つの楽章からなるが、それぞれが休みなく演奏される。独奏チェロは彼自身を、オーケストラは彼を取り巻く環境を表現している。両者はさまざまな形で「闘争」を繰り広げるが、最後は、作曲者が「私にとって絶対的な純潔、絶対的に保障された自由」と呼んだA音に収斂(しゅうれん)し、終結を迎える。

演奏時間は約30分

【お薦め盤】
ジークフリート・パルム(Vc)、ハンス・ツェンダー指揮、ベルリン放送交響楽団(カメラータ)

Isanyuncd


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