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2007/10/14

ロイド=ウエッバー レクイエム

現代イギリスの作曲家アンドリュー・ロイド=ウェッバー(1948~  )は、『キャッツ』や『オペラ座の怪人』などのミュージカルで世界的に名を知られている。

ロンドンの音楽一家に生まれた彼は、はじめは歴史学を学ぶが、やがて音楽を志して王立音楽大学に進み、数々のミュージカル作品を手がけて成功を収める。人気作曲家の彼が、父親の死やカンボジアで発生した悲惨な殺人事件のニュースをきっかけにして、初めて宗教音楽を手がけたのが、この1985年に初演された『レクイエム』である。

僕は、かつてイギリスに旅したとき、本場ロンドンでミュージカル『スターライト・エクスプレス』に接して、その音楽の美しさに強い感銘を受けた経験がある。また、『キャッツ』の名曲「メモリー」は、僕にとって初の本格的なピアノ・レパートリーとなった思い出深い曲でもある。

曲は伝統的な形式に従い大きく8つの部分に分かれ、冒頭の「入祭唱」では、フルートの夢幻的な響きに導かれて歌われるボーイ・ソプラノの旋律からして、きわめて厳粛かつ本格的だ。

不思議な浮遊感を感じさせる旋律が印象的な「レコルダーレ(思い出したまえ)」やドラマティックな展開をみせる「オッフェルトリウム(奉献唱)」、ミュージカル作曲家の面目躍如たる「ホザンナ(救いたまえ)」など、聴きどころには事欠かないが、やはり圧倒的に心を惹(ひ)きつけられるのは、「ピエ・イエズ(安息を与えたまえ)」だろう。ソプラノのデュエットによって歌われるその天国的で浄化された美しさは、フォーレやデュリュフレの名曲にも引けをとらない。終曲のエンディングでは、オルガンが、この世の破滅を表すかのような不協和音を強奏し、冒頭のボーイ・ソプラノの旋律がリフレインされる中、消え入るように曲は閉じられる。

演奏時間は約40分。

現在までのところ、初演に先立ってアビイ・ロード・スタジオで録音されたマゼール盤しか発売されていない。名歌手を揃えたこのCDは、とりあえずは不足のない内容ではあるが、「ホザンナ」のロック調のリズムに合唱が乗り切れていないうらみがあるし、プラシド・ドミンゴの歌唱が、あまりにオペラ的で、違和感を覚えないわけではない。

すでに初演から四半世紀近くを経た今、そろそろ新しい録音の登場を望みたいのだが…。

【お薦め盤】
ロリン・マゼール指揮、イギリス室内管弦楽団、ウエストミンスター教会合唱団、プラシド・ドミンゴ(Ten)、サラ・ブライトマン(Sop)ほか (デッカ・ロンドン)

Lloydwebbercd


【追記】
youtubeでは、シャルロット・チャーチによる「ピエ・イエズ」の名唱が聴けます。


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