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2007年10月

2007/10/27

アッテルベリ ヴェルムランド狂詩曲

アルヴェーンやステンハンマルに続く、スウェーデンの代表的作曲家であるクルト・アッテルベリ(1887~1974)は、9曲の交響曲をはじめ協奏曲やオペラなど数多くの作品を残している。

Kurtatterberg1

彼が世界に名を知られることになったきっかけは、アメリカのレコード会社が主催した「シューベルト没後100年作曲コンクール」に匿名で応募した作品(現在の『交響曲第6番』)が第1位を獲得し優勝したこと。彼は1万ドルの賞金を得て、良くも悪くも一躍「時の人」になったのだ。

もちろん交響曲や協奏曲などにも素晴らしい曲があり、いずれここでも取り上げたいが、今回紹介するのは、1933年にスウェーデン放送協会からの委嘱により作曲された『ヴェルムランド狂詩曲(作品36)』である。

この曲は、1909年に女性として初めてノーベル文学賞を受賞したスウェーデンの作家、セルマ・ラーゲルレーヴ(1858~1940)の75歳の誕生日のために書かれ、同日、生中継された。彼女がいかに喜んだかは、想像に難くない。

曲は、冒頭、弦楽合奏により、スウェーデンの有名な民謡『ヴェルムランドの歌』に基づく短調のテーマを厳かに奏でる。やがて舞曲風の特徴あるモチーフにより長調に転じてにぎやかに盛り上がるが、やがてまた冒頭のテーマに回帰して、静かに曲を閉じる。

全体を流れる寂寥(せきりょう)感、北欧の薄暗い空、冷たい空気を思わせるような雰囲気は、ロマンティックで夢のように美しい。

演奏時間は約9分

【お薦め盤】
ロジャー・エップル指揮、ベルリン放送交響楽団(CPO)

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【追記】
youtubeに音源が掲載されています。(2009年2月1日、2011年7月19日、2012年1月20日加筆)

2007/10/20

スーク 幻想的スケルツォ

チェコの作曲家でありヴァイオリン奏者であったヨセフ・スーク(1875~1934)が名を知られるのは、プラハ音楽院時代の作曲の師ドヴォルザークの娘婿になったことや、同姓同名の孫が著名なヴァイオリニストとして現在も活躍していることくらいであった。
また唯一広く知られていた作品は、18歳の若書きの『弦楽セレナーデ』だったのではないだろうか。

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僕も、20年数年前から『アスラエル交響曲』や管弦楽組曲『リンゴの木の下で』など、機会あるごとにさまざまな作品を聴いてきたにもかかわらず、いまいち心を打つ曲がなかったのが事実である。

しかし、偶然に買い求めたCDで、交響詩『夏物語』のフィルアップのように収められた、この『幻想的スケルツォ(作品25)』を聴いて耳を疑うほど驚いた。「何と素晴らしい曲!」 僕は初めて、この作曲家の作品に感動した。

曲はアレグロ・ヴィヴァーチェで、木管の軽妙なリズムの主題で始まるが、何と言ってもこの曲の最高の聴きどころは、54小節目からチェロ~ヴァイオリンによって表情豊かに奏される、郷愁を帯びたメロディーである。

このスークこそが、ドヴォルザークの正統の継承者であると思わせるに足る傑作であり、ぜひ多くの人に聴いてもらいたい。

演奏時間は、およそ15分

【お薦め盤】
チャールズ・マッケラス指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(ロンドン)

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【追記】
何と、youtubeに映像が掲載されていました!
けっこう知名度の低い曲だと思っていたので驚きです。恐るべしヨウツベ・・・。(2010年3月29日加筆)
(※演奏は異なります)

2007/10/14

ロイド=ウエッバー レクイエム

現代イギリスの作曲家アンドリュー・ロイド=ウェッバー(1948~  )は、『キャッツ』や『オペラ座の怪人』などのミュージカルで世界的に名を知られている。

ロンドンの音楽一家に生まれた彼は、はじめは歴史学を学ぶが、やがて音楽を志して王立音楽大学に進み、数々のミュージカル作品を手がけて成功を収める。人気作曲家の彼が、父親の死やカンボジアで発生した悲惨な殺人事件のニュースをきっかけにして、初めて宗教音楽を手がけたのが、この1985年に初演された『レクイエム』である。

僕は、かつてイギリスに旅したとき、本場ロンドンでミュージカル『スターライト・エクスプレス』に接して、その音楽の美しさに強い感銘を受けた経験がある。また、『キャッツ』の名曲「メモリー」は、僕にとって初の本格的なピアノ・レパートリーとなった思い出深い曲でもある。

曲は伝統的な形式に従い大きく8つの部分に分かれ、冒頭の「入祭唱」では、フルートの夢幻的な響きに導かれて歌われるボーイ・ソプラノの旋律からして、きわめて厳粛かつ本格的だ。

不思議な浮遊感を感じさせる旋律が印象的な「レコルダーレ(思い出したまえ)」やドラマティックな展開をみせる「オッフェルトリウム(奉献唱)」、ミュージカル作曲家の面目躍如たる「ホザンナ(救いたまえ)」など、聴きどころには事欠かないが、やはり圧倒的に心を惹(ひ)きつけられるのは、「ピエ・イエズ(安息を与えたまえ)」だろう。ソプラノのデュエットによって歌われるその天国的で浄化された美しさは、フォーレやデュリュフレの名曲にも引けをとらない。終曲のエンディングでは、オルガンが、この世の破滅を表すかのような不協和音を強奏し、冒頭のボーイ・ソプラノの旋律がリフレインされる中、消え入るように曲は閉じられる。

演奏時間は約40分。

現在までのところ、初演に先立ってアビイ・ロード・スタジオで録音されたマゼール盤しか発売されていない。名歌手を揃えたこのCDは、とりあえずは不足のない内容ではあるが、「ホザンナ」のロック調のリズムに合唱が乗り切れていないうらみがあるし、プラシド・ドミンゴの歌唱が、あまりにオペラ的で、違和感を覚えないわけではない。

すでに初演から四半世紀近くを経た今、そろそろ新しい録音の登場を望みたいのだが…。

【お薦め盤】
ロリン・マゼール指揮、イギリス室内管弦楽団、ウエストミンスター教会合唱団、プラシド・ドミンゴ(Ten)、サラ・ブライトマン(Sop)ほか (デッカ・ロンドン)

Lloydwebbercd


【追記】
youtubeでは、シャルロット・チャーチによる「ピエ・イエズ」の名唱が聴けます。


2007/10/07

フックス 小管弦楽のためのセレナード(第5番)

オーストリア・ロマン派の作曲家ロベルト・フックス(1847~1927)は、ウィーン音楽院で長年教鞭をとり、マーラーやヴォルフ、シベリウス、ツェムリンスキー、エネスコ、シュレーカーなど、そうそうたる音楽家を育てたことで知られる。また、同院の同僚には、ブルックナーやゴルトマルクがいる。

Fuchs

幼少期に、音楽教師でああった父からピアノやオルガン、ヴァイオリンを学んだ彼は、父のような音楽教師を志して、13歳のときにグラーツに行くが、生活は極めて貧しく、1日1食の生活が続いたという。そんな境遇の中でも、めきめきと技術を磨いた彼は、やがてウィーン音楽院でヘルメスベルガー1世らに学ぶことになる。1875年には同院の音楽理論の教授に就任し、その後、亡くなるまで、長くその職を務めた。

ブラームスに認められ、作曲家としても出世作『交響曲第1番ハ長調(作品37)』をはじめ、あらゆる分野で数多くの作品を残している。シューマンやブラームスなどの影響の強い作風が特徴だが、とりわけ名高いのは、小編成のオーケストラのためのセレナードで、当時は、その人気に掛けて「セレナード屋の狼(フックス)」というあだ名が付けられたほどであったという。

彼には、セレナードと名のつく作品が5曲残されているが、今回取り上げるのは、その最後の作品にあたる『小管弦楽のためのセレナードニ長調(作品53)』で、小編成のオーケストラのために作曲された。この曲は、1895年、ヨハン・シュトラウス2世の音楽家デビュー50周年を祝して作曲、作曲者自身の指揮で初演され、聴衆の大喝采を受けたという。

4つの楽章いずれも霊感に富んだ美しい旋律にあふれているが、とりわけ第4曲アレグロ・ヴィヴァーチェでは、ヨハン・シュトラウスの喜歌劇『こうもり』のワルツが随所に引用され、楽しい聴きものとなっている。

演奏時間は約22分


【お薦め盤】

オルウィン・フランシス指揮、ルクセンブルク・フィルハーモニー交響楽団(CPO)

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