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2006/02/12

伊福部昭 交響譚詩

この2月8日、日本を代表する作曲家である伊福部昭(いふくべ・あきら 1914~2006)氏が、逝去された。享年91歳。

いつかここでも、その素晴らしい作品を取り上げてみたいと考えながら、先延ばしにしてしまっていたが、本日、追悼の意を込めて、取り上げさせていただきたい。

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彼は、一般には、映画『ゴジラ』や『大魔神』など映画音楽の作曲者として知られているが、純音楽の分野においては、まさしく日本の「民族楽派」とでも呼ぶべき作曲家の代表格として活躍した。また教育者としても、芥川也寸志や黛敏郎をはじめ、数多くの優れた人材を育てた。

僕にとっても、深く尊敬する日本人作曲家のひとりであり、十年ほど前、某イベントの交流会会場で、持参した『伊福部昭の宇宙』(音楽之友社刊)にサインをいただくとともに、短い時間ではあったが、その温かい人柄に接することができ、感無量になった思い出がある。

彼の音楽の特徴は、彼が幼少期を過ごした北海道に伝わるアイヌの歌や東北地方の民謡が根底にあるが、彼自身はむやみに民族性を強調しようとしたわけではなく、作曲という創造的行為においては、作曲者が潜在的に持っている美意識や価値観が、おのずと発露されるはずであると考えた。

彼の場合、それがオスティナートの多用であり、ときに暴力的ともいえるオーケストレーションであったわけで、生涯を通して、そのスタイルを貫いたため、前衛音楽が全盛のころは、時代遅れのレッテルを貼られ、中傷や無視といった不遇の時代を、長年堪え忍ばなければならなかった。

しかし1970年代の後半から、一気に再評価の機運が高まることになる。そのエポックメイキングな出来事のひとつである山田一雄指揮、新星日本交響楽団による演奏会は録音にも残されており、その中の『日本狂詩曲』の復活演奏を聴いてみてほしい。演奏が終わるやいなや、一斉に巻き起こるブラヴォーの嵐。品がないとか、やり過ぎだと思われるかもしれないが、これは曲や演奏の素晴らしさに対する賛辞であると同時に、これほどの傑作が、長い間不当に無視されてきた事実、そして、その流れにくみした音楽関係者に対する怒りが入り交じった「叫声」なのだ。

評価が定まったかと思われる今日でも、『レコード芸術』などの音楽専門誌では、いまだに否定的な論評が書かれ続けている。音楽評論家とは、かくも稚拙な感覚しか持ち合わせていないものなのかと呆れるばかりだ。

彼は純音楽の分野において、『土俗的三連画』や『タプカーラ交響曲』などの管弦楽曲、『リトミカ・オスティナータ』などの協奏曲、その他、歌曲や声楽曲など多くの傑作を残しているが、今回ご紹介するのは、彼の若き日の代表作のひとつである管弦楽曲、『交響譚詩』である。

1943年に作曲された二管編成の管弦楽曲で、題名にある「譚詩(たんし)」とは「バラード」の訳語であり、詩的なテーマに基づいた舞踊音楽と考えてよいだろう。

曲は2つの楽章(譚詩)からなり、1曲目のアレグロ・カプリッチオーソでは、彼にはめずらしくソナタ形式を基本に曲が展開する。冒頭いきなりフォルティッシモで始まる主要主題が全体の性格と運動性を形作る。4拍子の曲だが、折々登場する3拍子→2拍子→3拍子→4拍子の部分が、推進力において重要なアクセントになっている。他にも例えば、展開部で196小節目からのヴァイオリンソロの異国情緒など、聴きどころが満載だ。

2曲目のアンダンテ・ラプソディコは、もともと1935年の『日本狂詩曲』の第1曲「じょんがら舞曲」(後に破棄)に基づいて作曲されたものであり、前曲がアジア的色彩が濃いのに比べ、きわめて日本的情緒にあふれている。冒頭のオーボエソロから、まるで荒涼とした雪原のような世界が広がるかのように聞こえる。主題には都節音階やヨナ抜き音階が用いられている。

作曲当時、音楽界において異端児扱いされていた彼であったが、この作品は、例外的に早くから評価が得られ、日本ビクターが主催した第2回管弦楽曲懸賞の第1位に入選するとともに、同曲を収録したSPレコードは、文部大臣賞が授与されるという栄誉を得た。

なお、この曲は、1942年、30歳の若さで亡くなった彼の兄(勲)に捧げられている。

演奏時間はおおむね16分。

【お薦め盤】
広上淳一指揮、マルメ交響楽団(BIS)

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【追記】
youtubeに音源が掲載されています。


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