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2006年1月

2006/01/15

プロコフィエフ トッカータ

セルゲイ・セルゲーエヴィチ・プロコフィエフ(1891~1953)は、ロシア(ソビエト)が生んだ大作曲家のひとりであり、生前は指揮者やピアニストとしても活躍した。

Prokofiev

幼少期から母親の指導のもと、音楽の優れた才能を現し、13歳の時、サンクトペテルブルク音楽院でリャードフやリムスキー=コルサコフらに学んだ。
当時より鬼才として名を知られ、その急進的な作風や演奏スタイルが賛否両論を巻き起こしたが、彼はそれを意図的に仕掛けていたと思われるふしがある。

1918年、ロシア革命を避けてアメリカへ亡命。1923年にはフランスを拠点に活動するが、10年後に祖国へ帰国する。その後、映画音楽『イワン雷帝』や『交響曲第5番』をはじめ数々の傑作を生み出し、スターリン賞を幾度も受賞するが、1948年、いわゆるジダーノフ批判の対象になり、健康を害してしまう。

今回ご紹介する作品は、彼が1912年、21歳の時に作曲されたピアノのための『トッカータニ短調(作品11)』である。
曲は、青年期の彼の特徴である冷徹で暴力的な曲調で支配され、重音の連打や3オクターブの跳躍、手の交差など、演奏の難易度はきわめて高い。
『ピアノソナタ第7番』の第3楽章と同様、その不気味さや野蛮さが、かえってやみつきになる名曲である。

演奏時間は約4~5分

下記の「お薦め盤」の他に、アルゲリッチの名演もお聴きいただきたい。

【お薦め盤】
オレグ・マルシェフ(DANACORD)

Prokofievcd


【追記】
名曲なので、youtubeにも数多くの映像があります。(2010年2月28日加筆)
※音や映像の質はよくありませんが、ブラボーと叫びたくなるほどの演奏です。

レーガー 無伴奏ヴィオラ組曲第1番

ドイツの後期ロマン派の巨人であるマックス・レーガー(1873~1916)は、オペラ以外の分野できわめて膨大な作品を残した。
天才ではあるが、生来、生活習慣に問題があり、心筋梗塞により43歳の若さで亡くなったときは、飲酒・喫煙・暴飲暴食による肥満なども原因であるといわれた。

Reger

バッハやブラームスの古典派路線を踏襲しつつも、より複雑・難解・重厚な彼の音楽は、再評価が進んでいるといわれる今日でも、広く親しまれるまでには至っていない。
最もよく知られる作品が、モーツァルトの有名な『ピアノソナタイ長調(K.331)』の第1楽章の主題に基づくオーケストラ曲『モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ(作品132)』であることは、何とも皮肉なことである。

そんな中において、室内楽やオルガン曲の分野は比較的親しみやすい作品が多く、『クラリネット五重奏曲』や2曲の『セレナード』などは、演奏会で取り上げられる機会もある。

今回ご紹介する『無伴奏ヴィオラ組曲第1番(作品131d)』は、1915年、彼の晩年に作曲された3曲ある独奏ヴィオラのための組曲の1曲。
4つの楽章からなり、ヴィオラの機能を最大限に生かして、冒頭より、心の奥底をえぐるような厳しく劇的な音楽が展開される。
古今東西のヴィオラ奏者にとっては、欠くことのできないレパートリーとなっている。

演奏時間は約12分

【お薦め盤】
今井信子(BIS)

Reger_viola

【追記】
youtubeに名手バシュメットによる演奏があります。(2009年2月1日加筆)
※編曲版

2006/01/14

ヤルヴィのグラズノフ『交響曲第5番』

エストニア出身の名指揮者ネーメ・ヤルヴィは、これまでに数多くの注目すべき録音を残してきた。

20年以上前、イギリスのシャンドスやスウェーデンのBISなどの新興レーベルを中心に、シベリウスやプロコフィエフ、スクリャービンなどの交響曲全集を次々と完成させた。注目すべき点は、これらの大作曲家の比較的よく知られている作品だけでなく、今まで全く録音されてこなかった曲を、フィルアップとして取り上げてくれたことだ。

さらに特筆すべきことは、これまで一部にしか知られていなかった作曲家、例えば、デンマークのニルス・ガーデやスウェーデンのヴィルヘルム・ステンハンマル、ヤルヴィの母国エストニアのエドゥアルド・トゥビンなどの隠れた名曲というべき作品を積極的に録音し、彼らの再評価に多大な貢献をしたことである。

今回、ここで取り上げるグラズノフについても、ヤルヴィはオルフェオレーベル(ドイツ)で交響曲全集を完成している。(その他、バレエ音楽などの管弦楽曲も数多く録音している)

グラズノフは、決してマイナーな作曲家というわけではないが、録音当時の1980年代前半までは、ソビエト(現在はロシア)以外で、交響曲全集に取り組む奇特な指揮者は存在しなかった。

ここでヤルヴィは、グラズノフが完成した1番から8番の交響曲を、バイエルン放送交響楽団およびバンベルク交響楽団とともに非常に優れた演奏を聴かせてくれるが、その中でも、僕が特に感銘を受けたのは、全集第1弾として発売された『交響曲第5番変ロ長調(作品55)』である。

例えば、第2楽章スケルツォのメンデルスゾーン風の絶妙なリズム感、第3楽章アンダンテの感傷的で心が締めつけられるような美しいカンタービレ、後半に進むにつれ大きな盛り上がりをみせるフィナーレなど、素晴らしい聞き物となっている。もともとこの作品は、グラズノフの交響曲の中でも最も優れた作品だと思うが、作品が持つ魅力を最大限に引き出したヤルヴィの能力には、脱帽である。

近年は、彼の2人の息子(パーヴォ、クリスチャン)が指揮者として、父をしのぐ活躍を見せ始めていて、以前のような活躍が聞かれなくなったのは残念だが、これからもぜひ、よい仕事を続け、われわれファンを楽しませてもらいたいものだと切に願っている。

【お薦め盤】
ネーメ・ヤルヴィ指揮、バイエルン放送交響楽団(オルフェオ)

1983年録音

Glazunovcd2


2006/01/08

冨田勲 「新日本紀行」オープニングテーマ

今回は、冨田勲(とみた・いさお、1932~    )について記してみたい。


Tomita

彼について、詳細な説明は不要だろう。慶應義塾大学を卒業後、テレビ番組、特に手塚治虫のアニメ『ジャングル大帝』や『リボンの騎士』、NHKの大河ドラマ『花の生涯』や『勝海舟』などの音楽を担当して知られているが、1974年にムーグ・シンセサイザーでドビュッシーの名曲を演奏したアルバム(LPレコード)『月の光』がグラミー賞にノミネートされ、以降、クラシック音楽の名曲の数々を編曲・演奏したが評判を呼び、大ベストセラーとなった。日本におけるシンセサイザー音楽の先駆者といっても過言ではないだろう。

特に第1弾となったこの『月の光』に収められている『アラベスク第1番』の清冽で幻想的な響きを知らない人は、おそらくいないのではないか。

Tomitacd2

また1984年、ドナウ川河畔を皮切りに、「サウンドクラウド(音の雲)」という立体音響による野外パフォーマンスを世界各地で繰り広げ、大きな話題を呼んだ。近年も、彼自身の作曲による『源氏物語』を発表するなど、新たな音楽・音響の世界を模索し続けている。

僕にとっては、もちろん上記の『月の光』や『惑星』などの作品の数々も忘れがたいが、ここでは、NHKテレビのドキュメンタリー番組『新日本紀行』のテーマを取り上げたい。

1963年から1969年まで同番組で使用された曲で、冒頭のホルンの導入部に続いて弦楽器で奏されるメインテーマは「君が代」のメロディーをベースに作曲されているといわれる。終戦後、作曲者の祖父母のいる茨城県常陸太田市での生活や美しい田園風景にインスピレーションを得て作曲された。われわれ日本人の琴線に触れ、強く郷愁を誘われる作品で、冨田勲の名を永遠たらしめる名曲のひとつだと思う。

なお冨田勲は、坂本龍一がリスペクトする作曲家のひとりでもあり、彼が音楽を担当した映画『ラストエンペラー』のテーマの旋律がこの曲に極似していることは、非常に興味深い。

演奏時間はおよそ4分半

【お薦め盤】
大友直人指揮、東京交響楽団(RCA)

Tomitacd


【追記】
youtubeに作曲者自身の指揮による映像が掲載されていますが、ここで演奏している千葉県少年少女オーケストラの演奏は驚異的な素晴らしさです。ぜひお聴きください。

2006/01/07

ロドリーゴ 交響詩『彼方なる世界を求めて』

現代スペインが生んだホキアン・ロドリーゴ・ビドレ(1901~1999)は、代表作であるギターと管弦楽のための『アランフェス協奏曲』の作曲家として、クラシック音楽界だけでなく、広く世界にその名を知られている。

Rodrigo

彼は3歳の時、ジフテリアにかかり失明。その後、ピアノやヴァイオリンを学び、パリのスコラ・カントルムでポール・デュカスに作曲を学ぶ。

1939年に作曲された『アランフェス協奏曲』の成功により、ギターのみならず、ピアノやヴァイオリンなど、世界中の著名な演奏家から同種の曲の委嘱が相次いだが、彼の本領は、あくまでもギターソロやピアノ曲にあったといってよい。

彼の曲は、故国スペインの民族音楽の要素を取り入れながらも、パリで学んだ色彩豊かで洗練された作風が大きな魅力となっているが、今回ご紹介する曲は、そうした管弦楽法の妙技が遺憾なく発揮された交響詩『彼方なる世界を求めて』である。

冒頭、シンバルによるロールの後に、コール・アングレやオーボエによる異国情緒あふれる動機が奏され、それがフルートに引き継がれ、夜の静寂のような雰囲気を表すが、やがて2分過ぎに突如として、弦楽合奏による雄大で輝かしいメインテーマが登場する。その後、静寂と喧噪の間が繰り返され、後半、大きく盛り上がりを見せるが、最後は再び静寂の中に帰ってゆく。

1976年、アメリカ合衆国独立200年を記念して作曲された曲で、彼のオーケストラ作品を代表する傑作として、強くお薦めしたい。

演奏時間は約14分

【お薦め盤】
エンリケ・バティス指揮、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(Brilliant)

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【追記】
音は少し歪んでいますが、youtubeに音源が掲載されました。(2010年3月29日加筆)


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