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2005年5月

2005/05/15

グリンカ ヴィオラ・ソナタ

ロシア音楽の祖と呼ばれるミハイル・グリンカ(1804~1857)は、ロシアの民族要素を取り入れた作品を数多くの作曲し、後のロシア五人組やチャイコフスキーらの先駆的な役割を果たした作曲家として知られる。

Glinka

19世紀の初頭、裕福な貴族の家に生まれた彼は、幼いころよりピアノやヴァイオリンをはじめとする楽器に親しみ、作曲にも取り組んだ。やがてイタリアに留学し、数々の優れた芸術に触れる中で、ロシア人としての自覚を強く持つようになり、1836年に発表した歌劇『イワン=スサーニン』は、ロシア人の手による史上初のロシア語オペラとして高く評価された。

現在、最もよく知られているのは歌劇『ルスランとリュドミラ』の序曲(のみ)と思われるが、彼は生涯にわたって室内楽や歌曲の分野で数多くの作品を残していて、今回取り上げる『ヴィオラ・ソナタニ短調』は、比較的有名な作品のひとつである。

この曲は、彼がイタリアに留学する前、20歳をすぎたばかりの1825年から1828年にかけて作曲されたが、当時手がけていた弦楽四重奏曲などと同様、未完のまま残されることとなった。

全体は3つの楽章で構成されるはずだったが、第2楽章アンダンテの終結部が欠落しているとともに、終楽章のロンドはスケッチのみが残された。1931年にヴァディム・ボリゾフスキーによって第2楽章が補筆された。また、近年になって、同時期に作曲された作品をもとに3楽章版の試みもなされるようになったといわれるが、僕は未聴である。

第1楽章のアレグロ・モデラートの冒頭、ヴィオラによって奏されるメランコリックなテーマは一度聴いたら忘れられないほど魅力的である。続く第2楽章はピアノが主導する穏やかなテーマが美しく、途中、短調になり感情が揺れ動くが、やがて静かに曲は閉じられる。

なお、この曲はヴァイオリン・ソナタとして演奏されることもある。

演奏時間は約17分

【お薦め盤】
今井信子(Vla)、ローランド・ペンティネン(Pf)(BIS) ※2楽章版

Glinkacd


【追記】
youtubeにも数多くの映像が掲載されています。(2009年2月1日加筆)


2005/05/14

メンデルスゾーン 序曲『フィンガルの洞窟』

フェリックス・メンデルスゾーン(1809~1847)の業績については、ここで詳細に述べるまでもないが、ドイツ・ロマン派初期の大作曲家であり、生前は指揮者やピアニストとしても活躍。とりわけ、J.S.バッハの『マタイ受難曲』の復活上演やシューベルトの『交響曲ハ長調』の初演を行うなど、音楽史においてもきわめて重要な役割を果たしたことで知られている。

Mendelssohn

彼のフルネームは、「ヤコプ・ルートヴィヒ・フェリックス・ メンデルスゾーン・バルトルディ」といい、ハンブルクの裕福な銀行家の息子として生まれた。幼少期から早熟の天才として知られ、16~7歳のときに作曲した『弦楽八重奏曲変ホ長調(作品20)』や『「真夏の夜の夢」序曲(作品21)』の完成度を聴けば、驚愕の才能のほどが実感できるだろう。

文豪ゲーテに認められ、ケルビーニやロッシーニ、フンメルら先達の知遇を得る一方で、ショパンやシューマンら同世代の作曲家らと交友を深めるなど、縦横無尽の活躍ぶりは有名で、1835年には、ライプチヒのゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者に迎えられ、当楽団の発展の基礎を築いた。

1843年に、かねてより念願であった音楽院をライプチヒで開校し、盟友シューマンを教授に招聘。また、ヨーロッパ各地で演奏会を行うなど、活動がますます広がりつつあった彼は、1847年、イギリスに向かう船上で姉ファニーの死という悲報に接することになる。最大の理解者であり、心の支えでもあった姉の死は、彼にとって痛恨事であったと思われ、ショックのあまり精神に異常を来し、再び回復することなくこの世を去った。時に38歳の若さであった。

作曲家として、あらゆる分野で膨大な作品を残したが、かねてより管弦楽曲の傑作として名高いのが、1830年に作曲され、1832年にロンドンで初演された演奏会用序曲『フィンガルの洞窟(作品26)』である。

20歳の時のイギリス旅行の途中、スコットランドのヘブリディーズ諸島のスタファ島を訪れた彼は、フィンガルの洞窟の景色に強い感銘を受け、冒頭の主題を思い付き、姉への手紙にその旋律とともに感動を伝えたという。

曲は、導入部を持たないソナタ形式。ヴィオラ・チェロ・ファゴットで奏される第1主題は、下降を繰り返すモチーフが印象的で、まるでさざ波のようでもあり、神秘的な雰囲気を持ち合わしている。続く第2主題はチェロとファゴットによる憧れに満ちた歌謡主題で、曲はこの2つの主題、とりわけ第1主題のモチーフが重要な役割を果たす。ワーグナーの賞賛の声にあるとおり、まるで優れた絵画を見るような不滅の名曲である。

それにしても、以前はもっと頻繁に演奏されていたように思うが、最近は取り上げられる機会がめっきり減ったように感じるのは、僕の気のせいだろうか。

演奏時間はおよそ11分

【お薦め盤】
クラウディオ・アバド指揮、ロンドン交響楽団(グラモフォン)

Mendelssohncd


【追記】
youtubeに、洗足学園音楽大学の演奏が掲載されていました。なかなかの名演です。
※冒頭から30秒くらいまでは「音のみ」が続きますので、ご注意を!


2005/05/05

レクオーナ マラゲーニャ

20世紀前半に、クラシックとポピュラー音楽の分野で活躍したキューバの音楽家エルネスト・レクオーナ(1896~1963)は、ピアニストやルンバ・バンド「レクオーナ・キューバン・ボーイズ」のリーダーとして演奏活動を繰り広げたことで知られる。

Lecuona

ハバナ近郊の街に生まれた彼は、幼少期からピアノを学び、14歳のときにハバナ国立音楽院に入学。卒業時には金メダルを得て首席で卒業したほどの秀才であった。「キューバのガーシュイン」とも呼ばれ、アメリカやヨーロッパを中心に華々しい演奏活動や録音などを続けていた彼だったが、1960年、キューバ危機が起こると、革命の混乱を避けて合衆国(フロリダ)に渡り、その後は故国に戻ることなく、生涯を終えることになった。

作曲家としても多作家として知られ、ミュージカルや映画音楽、ヒットソングなどを手がける一方で、クラシック音楽の分野では、キューバの民族色を取り入れたピアノ曲や歌曲など数多く残していて、ラヴェルからも高く評価されたといわれる。

今回取り上げる『マラゲーニャ』は、ピアノ独奏のために作曲された6曲からなる『スペイン組曲「アンダルシア」』の終曲にあたり、南スペイン・マラガ地方に伝わる民謡マラゲーニャによる情熱的かつ叙情豊かな小品。組曲全曲の完成は1922年だが、この曲は1919年に作曲されている。

演奏時間はおよそ4分弱

ピアノ版のほかに、弦楽器やギター用などに編曲され、広く親しまれているが、今回はオーケストラに編曲されたダイナミックで華麗な演奏をご紹介したい。

【お薦め盤】
ダニエル・バレンボイム指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(パイオニア、DVD盤)

Lecuonadvd


【追記】
youtubeにも多くの映像が掲載されています。

<ピアノ版>

<オーケストラ版>

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