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2005/03/26

ヤナーチェク 弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」

近代チェコの作曲家レオシュ・ヤナーチェク(1854~1928)は、現代では、チェコの代表的作曲家のひとりとして知られているが、その真価が広く世界に認められるようになったのは、20世紀も後半になってからである。

Janacek

代表作としては、『イェヌーファ』『利口な女狐の物語』などをはじめとするオペラを筆頭に、狂詩曲『タラス・ブーリバ』、『シンフォニエッタ』などの管弦楽曲、『草陰の小径』や『霧の中で』などのピアノ曲など、広範な分野にわたって数多くの作品を残しており、出身地であるモラヴィア地方の民謡を取り入れた国民主義的な作風が特徴となっている。

室内楽曲の分野は、彼が力を注いだこともあり多くの優れた仕事を残しているが、弦楽四重奏曲は2曲が残されていて、いずれも名曲として知られている。

今回取り上げる『第1番』は、ロシアの文豪トルストイ(1828~1910)の小説『クロイツェル・ソナタ』に霊感を受けた作品である。この小説は、長距離列車の中で出会った老紳士が主人公に告白する、不貞を犯した妻を殺害する物語であるが、決して読了感のよいものではない。

この小説を読んだヤナーチェクは、そこに流れる歪んだ思想(それはトルストイ自身のものともいえる)に抗議の意味を込めて作曲したとされ、1923年の10月末から一週間程度で一気に書き上げられたが、もともとこの曲は、現在は失われてしまった『ピアノ三重奏曲』(1908~9年作)が原形となっている。

曲は4つの楽章からなるが、いずれも短い曲で、全曲を通しても17分程度でしかない。

冒頭に、弱音器を付けた第1ヴァイオリンとヴィオラにより切迫した主題を提示する。この陰湿な気分が全曲を支配することになる。
テンポは始終、大きく揺れ動くとともに、民謡調のメランコリックな旋律やモノローグのような音楽の合間に、突然差し込んでくるスルポンチチェロ(※故意に耳障りな音を出すために駒の近くで弓を弾く奏法)による動機が「(倒錯した)殺意」を表現しているようでもある。

聴いていて楽しい作品とは決して言えないが、ヤナーチェクの天才を証明するに足る傑作である。

演奏は、スメタナ弦楽四重奏団の最盛期、ドヴォルザークホールにおける1979年のライブ録音が素晴らしい。


【お薦め盤】
スメタナ弦楽四重奏団(スプラフォン)

Janacekcd


【追記】
名曲でもあり、youtubeにも多くの演奏が掲載されています。(2009年5月3日加筆)


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