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2005年1月

2005/01/30

コープランド クラリネット協奏曲

ガーシュインやバーバーなどとともに、20世紀のアメリカを代表するの作曲家のひとりであるアーロン・コープランド(1900~1990)は、歌劇や管弦楽曲をはじめ、協奏曲、室内楽曲などあらゆる分野において数多くの優れた作品を残している。

Copland

ピアノを習い始めたのが14歳になってからという遅咲きの音楽家であったが、それゆえ自分があえて作曲家として生きてゆこうと決意する中で、何をバックグラウンドとしていくべきかを真剣に考えたと思われる。おそらくそれは、作曲の師であったナディア・ブーランジェの後押しもあったのではないだろうか。

それまでのアメリカの作曲家が、多かれ少なかれヨーロッパ音楽の範疇から抜けることができなかった中で、彼はアメリカ人(黒人やインディアンを含めた)によるアメリカ独自の音楽を追求し、聴衆にも親しみやすい音楽を作曲した。

パリから帰国後、彼はアメリカ音楽の調査・研究に傾注し、その成果として作曲された一連のバレエ音楽『ビリー=ザ=キッド』や『ロデオ』、『アパラチアの春』は、開拓時代のアメリカ西部の音楽をほうふつとさせるもので、彼の名を一躍高めることになった。

今回取り上げる『クラリネット協奏曲』は、1948年に、「スウィングの王様」の異名を持つジャズ界のクラリネットの名手ベニー・グッドマンの委嘱により作曲された作品。ジャズの要素をふんだんに取り入れるとともに、作曲当時訪れたブラジルのポピュラーソングのメロディーも引用される。

曲は大きく分けて2つの部分からできているが、連続して演奏される。
冒頭、印象派風のゆるやかな旋律に始まり、カデンツァを経てクラリネットの運動性と多彩な音色を生かしたジャズやブルース、ラテン風の音楽が次々と現れ、華麗に展開してゆく。

演奏時間は約18分

【お薦め盤】
ポール・メイエ(Cl)、デイヴィッド・ジンマン指揮、イギリス室内管弦楽団(日本コロムビア)

Coplandcd


【追記】
youtubeに、ベニー・グッドマンの独奏、作曲者の指揮による世紀の名演が掲載されています。
ぜひご覧ください。(2009年12月1日加筆)


2005/01/22

イッポリトフ=イワーノフ 聖金口イオアン聖体礼儀

ミハイル・ミハイロヴィチ・イッポリトフ=イワーノフ(1859~1935)は、近代ロシアの国民主義作曲家・指揮者として活躍するとともに、多くの音楽家を育てた教育者として知られる。

Ippolitovivanov

ペテルブルク音楽院で、リムスキー・コルサコフに学び、卒業後はグルジアのトビリシで教鞭をとるが、1983年からは、チャイコフスキーの推薦により、モスクワ音楽院に迎えられ、40歳半ばから院長に就任する。

オリエンタリズムあふれる作風で知られ、かつて日本でも、音楽の授業の鑑賞教材として使われた管弦楽組曲『コーカサスの風景(作品10)』からの「酋長(しゅうちょう)の行進」で知られていたが、最近は滅多に録音・演奏されなくなってしまった。

今回ご紹介するのは、『聖金口イオアン聖体礼儀(作品37)』である。
この「聖金口イオアン聖体礼儀(せいきんこう・いおあんせいたいれいぎ)」とは、ギリシャ正教におけるカトリックのミサに相当するもの。ここで歌われる聖教歌は、原則、無伴奏であり、過去、チャイコフスキーやラフマニノフをはじめ多くの作曲家が聖歌を作曲している。日本では、かつて『聖ヨハネス=クリソストムスの典礼』とも呼ばれていた。

イッポリトフ=イワーノフの曲も有名曲のひとつであり、1曲目の詩篇第103篇「我が霊(たましい)よ、主を讃(ほ)め揚げよ」や9曲目の「主や、爾(なんじ)を崇め歌い」など、音楽としても純粋に素晴らしく、僕の愛聴曲である。

演奏時間は約30分。

【お薦め盤】
ボリス・アバリャン指揮、レジェ・アーティス室内合唱団(SONY CLASSICAL)

Ippolitovivanovcd

【追記】
youtubeにも曲が掲載されていますが、上記の演奏とは異なります。(2009年12月1日加筆)
※演奏曲は「我が霊よ、主を讃め揚げよ」です。

2005/01/16

芥川也寸志 絃楽のための三楽章<トリプティーク>

戦後日本を代表する作曲家の一人である芥川也寸志(あくたがわ・やすし、1925~1989)は、指揮者や教育者として、さらには日本音楽著作権協会(ジャスラック)の初代理事長として、日本の音楽界の発展に大きく貢献した人物である。

Akutagawa

「文豪」芥川龍之介の三男として東京に生まれた彼は、幼少の頃から父の遺品であるSPレコードを通じて音楽に親しみ、やがて作曲家を志すようになる。猛勉強の末、東京音楽学校予科に入学するが、学徒動員により中断。終戦後、復学し、そこで講師として大学に迎えられていた伊福部昭に師事し多大な影響を受ける。この出会いが彼の音楽家としての方向性を決定付けることになった。

大学卒業後、『交響三章』(1948年)、『交響管絃楽のための音楽』(1950年)、『交響曲第1番』(1954年)など作品を次々と発表。これらは、師の伊福部昭をはじめ、彼が傾倒したプロコフィエフ、カバレフスキーなどの影響を受けながらも、彼独自の語法である親しみやすいリズムやメロディーが大きな魅力で、演奏会で取り上げられる機会も多い。

他にも、大江健三郎の台本による歌劇『ヒロシマのオルフェ』、インドの石窟院からインスピレーションを得て作曲された『エローラ交響曲』などが代表作として知られるほか、『砂の器』『八つ墓村』をはじめとした映画音楽やNHK大河ドラマ『赤穂浪士』のテーマ音楽、童謡『ことりのうた』など、一般に広く親しまれている作品も数多い。

彼は、テレビ番組『音楽の広場』や『N響アワー』、ラジオ番組『100万人の音楽』の司会者としても知られるが、僕自身も、これらの番組を毎週楽しみにしていた記憶がある。

彼の著作である『音楽の基礎』(岩波新書)は、素人にもわかりやすい内容でありながら、きわめて示唆に富んだ名著であり、表紙がボロボロになるまで愛読した。僕は高校時代に、『芥川也寸志の作曲講座』という通信講座を受講していたことから、彼に対しては格別の思い入れがあり、僕自身の音楽に関する基礎知識の多くは、彼から学んだものと言っても過言ではない。

さて、今回取り上げる『絃楽のための三楽章<トリプティーク>)』は、当時NHK交響楽団の常任指揮者であったクルト・ヴェスの依頼により、1953年に作曲された弦楽合奏のための作品で、ニューヨーク・フィルの演奏によりカーネギー・ホールで初演された。

「トリプティーク」とは「三連画」という意味で、3つの楽章を通して、弦楽器の多彩な表現力や運動性を最大限に生かした名曲である。とりわけ「子守唄」と名付けられた第2楽章アンダンテの日本情緒にあふれた節回しには、抗しがたい魅力がある。

演奏時間は約13分

彼の手兵でもあり、同志とも呼ぶべきオーケストラとの共演による記念碑的名盤で聴いてみたい。

【お薦め盤】
芥川也寸志指揮、新交響楽団(フォンテック)

Akutagawacd

2005/01/15

チャドウィック 交響的スケッチ

ジョージ・ホワイトフィールド・チャドウィック(1854~1931)は、19世紀のアメリカ合衆国の作曲界の重鎮として、重きをなした人物であり、アメリカにおける国民楽派の提唱者としても知られる。

Chadwick

彼は、マサチューセッツ州ローウェルに生まれ、ボストンのニューイングランド音楽院に学んだ後、他のアメリカの作曲家たちと同様、ヨーロッパに渡り、ドイツで「本場の」作曲を学んだ。1880年に帰国した後は、指揮者やオルガニストとして生計を立てながら作曲活動を行い、1897年には、母校ニューイングランド音楽院の院長に就任する。

彼は、ヨーロッパの模倣ではなく、アメリカらしい音楽・語法は何かを生涯にわたって追究した作曲家であり、そのひとつの回答が、1885年に作曲された『交響曲第2番変ロ長調』である。彼の作品は、ドヴォルザークにも大きな影響を与えたといわれている。

無論、真のアメリカ音楽の確立には、ガーシュインやアイヴズ、コープランド、バーンスタインなどといった次世代作曲家の登場を待たなければならないが、彼らの先人であるマクダウエルやチャドウィックらの試行錯誤は、アメリカ音楽界の歴史的功績として、もっと評価されてしかるべきものだと思う。

今回ご紹介する『交響的スケッチ』は、1895年から1905年にかけて作曲された彼の代表作のひとつであり、「記念祭」「ノエル」「いたずら好きの小鬼」「気まぐれなバラード」の4曲から構成されている組曲である。

全編、華麗で、時に劇的なオーケストレーション、美しく哀愁を帯びたメロディーが魅力的な曲で、彼の最も好評を博した作品といわれている。

演奏時間は約30分

【お薦め盤】
ホセ・セレブリエール指揮、チェコ州立フィルハーモニー管弦楽団(REFERENCE)

Chadwickcd


ヒンデミット チェロとピアノのための3つの小品

20世紀ドイツを代表する作曲家のひとりパウル・ヒンデミット(1895~1963)は、ほぼすべての分野にわたり600曲を超える作品を残しているが、特に特徴的なのは、オーケストラを構成するほとんどすべての楽器の独奏ソナタを作曲したことである。

Hindemith

ロマン主義からの脱却を目指した「新古典主義」「新即物主義」による作風で知られ、調性を否定しつつも12音技法に寄らず、中心音を設けた曲づくりを進めた。
最もよく知られた交響曲『画家マティス』や7曲の『室内音楽』をはじめ、素晴らしい作品が数多くあるが、彼の音楽に初めて接する人にとっては、正直、取っつきにくい印象はぬぐいきれない。

そこで、今回ご紹介するのは、1917年に作曲された『チェロとピアノのための3つの小品(作品8)』で、まだ彼が、新古典主義に向かう以前の時代、後期ロマン派の影響が濃厚な作品のひとつ。その名のとおり、「カプリッチョ」「幻想小品」「スケルツォ」の3曲からなり、いずれの曲も感情豊かで魅力的だが、特に第2曲「幻想小品」は、チェロにより朗々と奏されるメロディーが素晴らしい。

まずはこうした作品を聴いてから、やがて、新古典主義に開花した以降の作品群に挑戦してみてはいかがだろうか。

演奏時間は、およそ25分


【お薦め盤】
ユリウス・ベルガー(Vc)、ジークフリート・マウザー(Pf)(WERGO)

Hindemith_cellocd


【追記】
youtubeにいくつかの音源が掲載されています。(2012年7月8日加筆)
※曲は第2曲の「幻想小品」です。

2005/01/09

スマイス ミサ曲

イギリスの作曲家エセル・スマイス(1858~1944)は、同国では最も成功した女流作曲家であり、アメリカのエイミー・ビーチやフランスのオーギュスタ・オルメスなどと並んで、先駆的役割を果たした。

Smyth

ロンドンの裕福な軍人の家庭に生まれ、幼少より音楽家を志すが、父の反対に遭い猛反発、やがて念願かなって、ドイツやウィーンで作曲を学んだ。ブラームスやクララ・シューマン、マーラー、グリーク、チャイコフスキーなどと親交を深めるのもこのころである。

しかし1910年、女権拡張運動に身を投じ音楽活動を中断。1912年には、過激な活動により投獄されてしまう。彼女の最もよく知られた作品である合唱曲『女たちの行進』が、同志である活動家の女性囚人たちと彼女の指揮で演奏されたのは、この監獄の中である。
第1次世界大戦後は、創作活動に復帰するが、やがて耳の病のため引退。

彼女の出世作のひとつである独唱・合唱と管弦楽のための『ミサ曲ニ短調』は、1891年の作。2年後の初演の際には、ロイヤル・アルバートホールを埋めた聴衆から大きな喝采を浴びた。
この作品は、主題、構成力、オーケストレーションなど、どれひとつとっても大変優れたものであり、女流作曲家などという範疇を超えた力作。冒頭、男声合唱のユニゾンで厳粛に始まる「キリエ」から、輝かしい終曲「グローリア」に至るまで、パワフルな音楽が繰り広げられる。

演奏時間はおよそ61分

【お薦め盤】
ヘルムント・ヴォルフ指揮、ヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団ほか(audite)

Smythcd


【追記】
記事の中でも触れた『女たちの行進(The March of the Women) 』です。


ルクー ヴァイオリンソナタ

ベルギー生まれの作曲家ギョーム・ルクー(1870~1894)は、幼少期からヴァイオリンやピアノを学び、9歳で両親とともにフランスのボアティエへ移住、1888年には、パリ大学で哲学を学ぶが、作曲家になる夢を断ちがたく、翌年の1889年、大作曲家フランクに和声学や対位法を学ぶことになる。フランクは、同じベルギーの出身であるこの才気あふれる若者を可愛がったという。

Lekeu

翌年にフランクが交通事故が原因で67歳で亡くなると、その高弟であったダンディに師事する。1991年には、カンタータ『アンドロメダ』でローマ賞第2位を獲得するなど、将来を大いに嘱望されるが、腸チフスにかかり、1894年、わずか24歳で夭折した。

短い生涯であったが、管弦楽曲や室内楽曲、歌曲などの分野において、フランクの流れをくんだ優れた作品を発表し、未完や断片を含めるとその数は100を超える。

1889年、バイロイトでワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』に感激のあまり失神し、劇場の外へ運び出されたというエピソードがある。

今日、最もよく知られ演奏されるのは、1891年に作曲された傑作、『ヴァイオリンソナタト長調』である。
この曲は、上記のカンタータ『アンドロメダ』がブリュッセルで演奏された折、名ヴァイオリニストのイザイがそれを聴いて感銘を受け、ルクーにソナタの作曲を依頼したことによる。この作品は翌年、イザイにより初演された。

曲は伝統的な3楽章形式で作曲されていて、師のフランクのソナタと同様、循環形式を効果的に用いている。また、トレ・ラン(きわめて遅く)と指示された第2楽章では、故国ベルギーの民謡に由来する息の長い美しいメロディーが奏でられる。

みずみずしい楽想の数々、緻密な構成力は、作曲者の天才を証明するに十分であり、志(こころざし)半ばで亡くなったことが惜しまれる作曲家である。

演奏時間はおよそ30分

【お薦め盤】
アルテュール・グリュミオー(Vn)、ディラノ・ヴァルシ(Pf)

Lekeucd


【追記】
youtubeに音源が掲載されています。(2009年2月加筆)

2005/01/08

グノー 9つの管楽器のための小交響曲

フランスのシャルル・フランソワ・グノー(1818~1893)は、 『ファウスト』や『ロメオとジュリエット』など、19世紀フランスオペラの分野における、最も重要な作曲家として知られている。

Gounod

幼いころより母親のピアノの手ほどきを受け優れた楽才を発揮し、パリ音楽院で作曲を学び、21歳のときには、カンタータでローマ大賞を獲得する。ローマ留学の後、パリの教会オルガニスト及び聖歌隊楽長を務め、合唱運動団体であるオルフェオン協会の推進者としても活躍し、合唱曲や歌曲を数多く残した。

しかし、とりわけ彼の名を一般に広く知らしめているのは、1859年に、J..S.バッハの『平均率クラヴィーア曲集第1巻』の第1曲ハ長調を伴奏にした歌曲『アヴェ・マリア』であり、「グノーのアヴェ・マリア」として愛唱されている。

彼は、他にも管弦楽や室内楽の分野でも多くの作品を残していて、今回ご紹介する『9つの管楽器のための小交響曲変ロ長調』は、1885年に作曲された管楽合奏のための作品で、編成は、フルート1、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン各2の計9人の奏者で編成される室内楽曲である。

曲は、通常の交響曲の形式にしたがい、4つの楽章からなる。とりわけ第2楽章アンダンテ・カンタービレにおいて、序奏に続き、フルートによって導き出される叙情的な主題が印象的である。
全曲を通して、フランスのエスプリが利いた、素朴でありながら気品のある愛すべき作品である。

彼は1850年代に、オーケストラのための交響曲を2曲残しているが、演奏される機会は多くなく、「グノーの交響曲」といえば、むしろ、この作品の方が有名である。

演奏時間はおよそ20分

【お薦め盤】
モーリス・ブルグ管楽八重奏団(カリオペ)

Gounodcd


【追記】
名曲でもあり、youtubeにも数多くの演奏が掲載されています。

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