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2004/10/30

クライバーのシューベルト

この録音がLPレコードで発売されたときのことを、今でも鮮明に憶えている。

まず、何よりもジャケットに惹かれた。
クリムトの『ピアノを弾くシューベルト』の一部分。残念なことにこの絵画は、第二次世界大戦で焼失してしまったが、幸いにもカラー写真が残されているためその全容を見ることはできる。

Schubertklimt

まだ写真がなかったシューベルトの時代ではあるが、この絵は写真以上のリアリティがあり、観る者に多くのイマジネーションをかき立ててくれる名画だと思う。

さて、このシューベルトの『未完成交響曲』であるが、正直のところ、僕は中学生のころまでは、それほど熱心に聴く方ではなかった。初めて買ったコンパクト盤と呼ばれる17センチのレコードも、「未完成」という名前に興味を持ったからだし、その後に購入したブルーノ・ワルター&ニューヨーク・フィルの廉価盤LPも、「運命」のB面に入っていたからだった。
そこで出会ったのが、このクライバー盤である。

演奏を聴いて、想像以上の素晴らしさに心から感動した。
カルロス・クライバーの才能、ウィーン・フィルの表現力は、それまで聴いたどの『未完成交響曲』の演奏をも凌いでいた。それまで、あまりピンとこなかったこの曲が、こんなすごい名曲だったことに強い衝撃を受けた。

Kleiber

例えば、第1楽章の122小節、展開部に入り低弦がC音をトレモロで刻む上に、ヴァイオリンが導入部テーマを奏しながらクレッシェンドしていく部分の恐ろしいまでの緊張感はどうだ。第2楽章でクラリネットやオーボエで奏されるサブテーマの心に刺さる寂寥感も聴きどころである。

そもそもこの曲は、シューベルトのオーケストラ作品ではきわめて異質な存在だ。古典的な形式に従ってはいるが、描かれる世界は時代を超えている。まるでマーラーの交響曲のように思える。この曲の後に作曲された『交響曲第9番ハ長調』の方が、時系列的に見れば正統派の交響曲である。

そして、思いがけず素晴らしかったのは、フィルアップと思っていた『交響曲第3番ニ長調』の演奏。まさに「目から鱗」である。今作曲されたばかりのような新鮮さをもって、聴き手に迫ってくる。個々に聴きどころをあげるときりがないが、第2楽章アレグレットの小気味よいテンポ感、第4楽章のタランテラのような熱狂は他に類がない。

ウィーン・フィルの、艶やかな中にも翳(かげ)りがある音色も、大変素晴らしい。両曲とも、聴くたびに感動を新たにする不朽の名盤だ。

【お薦め盤】
シューベルト:交響曲第8番《未完成》&第3番
カルロス・クライバー指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(グラモフォン)

Schubertcd

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