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2004/08/06

藤掛廣幸 パストラル・ファンタジー

人は誰でも、その生涯において数多くの音楽にめぐり合うが、「運命(宿命)の一曲」を挙げることができる人はどれくらいいるのだろうか・・・。幸運にも僕にはあるのだ。今回は、それについて述べてみたい。
少々長くはなるが、お付き合いいただければ幸いである。


その作品は、岐阜県出身の作曲家・指揮者である藤掛廣幸(ふじかけ・ひろゆき 1949~   )氏によってつくられた。

氏は、これまでにオーケストラやマンドリン、吹奏楽曲をはじめ、オペラやミュージカルに至るまで、数多くの作品を発表し、高い評価を得る一方で、シンセサイザーやコンピューターの可能性にいち早く着目し、「ソロ・オーケストラ」と名付けられた電子楽器を駆使して、演奏家としても幅広く活躍している。

1977年、エリザベート王妃国際音楽コンクールの作曲部門において、管弦楽のための『縄文譜』がグランプリを受賞し、日本人初の快挙として、当時、大きく取り上げられたことを記憶されている方もいると思う。詳しいプロフィールや作品については、作曲者のホームページに掲載されているので、そちらをご覧いただきたい。

氏は、僕が尊敬する音楽家のひとりであり、いくつもの作品を愛聴しているが、何よりも取り上げたいのは、マンドリンオーケストラのための『パストラル・ファンタジー』である。

僕が初めてこの曲を知ったのは、おそらくAMラジオ放送だったと思う。偶然、ラジカセのスピーカーから流れ出てきた美しいメロディーやハーモニーに耳を奪われた。少年だった僕にとって、おそらくそれは初めての「感動」という体験だったのだろう、心が大きくざわめくような感情とともに、男性アナウンサーが淡々と述べる「ふじかけひろゆき作曲、パストラル・ファンタジーでした」という声を、今でも鮮やかに思い起こすことができる。

その後、時系列は定かではないが、国際的な作曲賞を受賞したことを新聞のニュースで知るとともに、同郷であることにも親しみを持った。次いで、苦学して音楽を続けてきたことなどを語る写真入りのインタビュー記事を読んだ。また、FMラジオにゲスト出演された番組を聴き、司会者と即興演奏について話されていたことなどが記憶に残っている。

また、これも偶然なのだが、テレビ番組で「青少年音楽祭」におけるジュネス・ミュジカル・マンドリン・オーケストラの演奏を観て、慌ててラジカセをテレビの前に持ってきて録音した記憶がある。(そのテープは長い間、僕の大切な宝物だった)

ここまで重なれば、もはや単なる「偶然の出来事」で片付けることはできないのかもしれない。

それにしても、何という素晴らしい曲なのだろう。 「天才の作品」としか言いようがない。何度聴いても魂を揺さぶられる。この曲は僕にとって、まさに「運命の一曲」であり、モーツァルトやベートーヴェンなどの名曲に並ぶ、いやそれ以上の存在なのだ。


【曲の解説】
ニ短調 4分の2拍子、三部形式にしたがう。

題名の「パストラル・ファンタジー(Pastrale Fantasy)」とは、作曲者によると「田園的な叙情を歌う」といった意味を表しているとのこと。1975年、東海学生マンドリン連盟岐阜大学ブロック(岐阜大学・椙山女学園大学)の委嘱により作曲、同年8月初演。

アンダンテの冒頭、童謡のような主題がマンドリンとマンドラによって静かに提示される。このテーマは大きく分けて2つの部分からなり、いずれも哀愁を帯びた美しいものである。その2つが繰り返されながらひとつの頂点が築かれる。その後、夢見るような経過句を経て、フォルティッシモによる総奏で主題が還ってくる部分は、感動で言葉も出ないほどである。曲が静まりかけると同時に、低弦に荒々しいモチーフが現れ、曲は中間部に突入する。

アレグロ・マ・ノン・トロッポの中間部はフーガの形式が用いられているが、先ほどのモチーフが、きわめて重要な役割を果たす。
まず、マンドリンがフーガ主題を提示し、マンドラがそれに応じる。低弦部が加わると一気に音楽が高揚し、嵐のような頂点を迎える。この部分は、マンドリンオーケストラの音楽になじみの薄い聴衆にとっては、既成概念が打ち砕かれるほどの衝撃を与えられることになるだろう。また、後半部(練習番号Y~)のシークエンスは、もはや神業としか形容のしようがない。

そしてフォルティッシモで再現される冒頭主題・・・。コーダでは、中間部のモチーフも加わり、ニ短調からニ長調に転調し、圧倒的な迫力のうちに曲が閉じられる。

言葉では、うまく言い表すことができないのがもどかしい。ぜひ一度、演奏(できれば実演)を聴いていただければ、決して僕の独りよがりではないことを実感していただけるはずである。

演奏時間はおよそ15分


【お薦め盤】
平光保指揮、岐阜シティマンドリン合奏団(Voicelle)

Fujikakecd


【追記】
youtubeに演奏が掲載されていますので、ぜひご覧ください。(2009年12月1日加筆、2011年2月17日修正)

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