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2004年8月

2004/08/29

カプースチン 8つの演奏会用エチュード

ロシアの作曲家でありピアニストのニコライ・カプースチン(1937~ )は、モスクワ音楽院で学ぶかたわら、在学中からジャズに傾倒し、クインテットやビッグ・バンドで演奏活動を続けた。
今日まで、クラシックの形式による、きわめてジャジーな作品を数多く発表している。

1984年に作曲された、この『8つの演奏会用エチュード(作品40)』は、彼の代表作とみなされており、最もよく知られた作品である。

第1曲「前奏曲」から第8曲「フィナーレ」まで、いずれも2~4分程度の小品から成り、独立してもよく演奏される。
いずれの曲もきわめて高度な演奏技術を要求する作品ばかりだが、すぐれて個性的、魅力的である。

とりわけ僕のお薦めは、「トッカティーナ」と名付けられた第3曲であるが、ピアノによるパラディドル(両手で奏するさまざまなリズムパターン)を駆使し、圧倒的な迫力で一気に駆け抜ける爽快感は格別である。

CDでは、アムランほか数多くの技巧派ピアニストの華麗な演奏が聴けるが、ここでは作曲家の自作自演をお薦めしたい。

【お薦め盤】
ニコライ・カプースチン(トリトン)

Kapustincd


【追記】
人気曲でもあり、youtubeにも動画が多数アップされているようです。ぜひ、ご覧ください。(2009年2月1日加筆)

※音が少々歪んでいますが、ご了承ください。


2004/08/22

ウェーバー ミサ・ソレムニス第1番 

カルル・マリア・フォン・ウェーバー(1786~1826)は、ドイツの初期ロマン派の代表的作曲家のひとりとして知られる。

Weber

代表作である歌劇『魔弾の射手』は、1821年にベルリンで初演され、史上初の本格的なドイツ国民オペラとして、一大センセーションを巻き起こすとともに、ワーグナーやベルリオーズをはじめ、多くの作曲家に影響を与えた。ベートーヴェンもこのオペラを高く評価し、特に、ホルンをはじめとする大胆な楽器法に触発されたといわれ、『第九交響曲』の第3楽章の中で奏されるホルンソロに、その影響を聞くことができる。

その他にも、ピアノと管弦楽のための『コンチェルトシュトックヘ短調(作品79)』をはじめとする多数の協奏曲、『フルート三重奏曲ト短調(作品63)』などの室内楽曲、『舞踏への勧誘変ニ長調(作品65)』に代表されるピアノ曲など、ほとんどの分野において優れた作品を残している。

今回ご紹介するのは、彼が仕えるザクセン王の求めに応じ、1818年に作曲された『ミサ・ソレムニス第1番変ホ長調(作品75a)』で、彼の数少ない宗教曲のひとつである。

曲は通常のミサ曲の定石に従い、第1曲「キリエ」から第7曲「アニュス・デイ」まで、演奏時間も40分に及ぶ堂々たる作品であるが、なぜか近年まで埋もれた存在だった。冒頭「キリエ」の合唱の堂々たる力感、続く第2曲「グローリア」の輝かしい運びは目がくらむほどであり、当時絶頂期にさしかかろうとしていた作曲者の筆の冴えを、存分に感じ取ることができる。

なお、この曲は、当時作曲中であった前述の歌劇『魔弾の射手』の影響が見られることから、俗称として「魔弾の射手ミサ」と呼ばれることもある。

【お薦め盤】
ホルスト・シュタイン指揮、バンベルク交響楽団及び合唱団ほか(EMI)

Webercd

2004/08/21

ブルッフ 交響曲第2番

ドイツ・ロマン派の作曲家マックス・ブルッフ(1838~1920)は、19世紀後半のドイツにおける作曲界の重鎮であり、1907年には帝室芸術院の副総裁に任じられるなど、教育者としても大きな役割を果たした。

Bruch

山田耕筰は、ベルリン高等音楽院留学時代にブルッフに作曲を学んでいて、彼の『自伝 若き日の狂詩曲』(中公文庫)には、その当時の思い出が記されている。

彼の『ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調(作品26)』は、すべてのヴァイオリン協奏曲の中でも、最も人気のある作品のひとつであり、『スコットランド幻想曲(作品46)』や『コル・ニドライ(作品47)』がそれに続く。他にも室内楽や声楽曲などに優れた作品が残されているが、その多くが未だ埋もれてしまっているのが残念でならない。

この『交響曲第2番ヘ短調(作品36)』は、1870年の夏に完成された作曲家の自信作であったが、初演時こそ好評を得たものの、再演時には不評に終わってしまった。当時の交響曲にはめずらしくスケルツォ楽章を欠いているが、両端楽章に流れる、ほとばしるようなエネルギーと、憂いを帯びつつも瑞々しさを欠くことがない緩徐楽章のバランスが素晴らしく。長い間埋もれていたことが信じられないほどの、優れた作品であると思う。

演奏時間は、およそ35分

CDには現在、ブルッフの作品の録音に力を入れているジェームズ・コンロン盤(EMI)をはじめ、いくつかの名演が存在するが、ここでは、僕に初めて曲の真価を教えてくれた、このマズアの名盤を推したい。

【お薦め盤】
クルト・マズア指揮、ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(フィリップス)

Bruchcd


【追記】
youtubeに音源が掲載されています。(2010年3月29日加筆)

ジュリーニ&ロス・フィルによるブラームス『交響曲第1番』

ブラームスの交響曲は、4曲いずれも甲乙付けがたい名曲だが、演奏会で聴く機会が最も多いのは、何といっても第1番であろう。

構想21年、43歳のブラームスが満を持して世に問うた自信作であり、全編にわたって密度が濃い音楽が展開される。初めて聴く人は、あまりのテンションの高さに「聴き疲れ」するかもしれないが、聴き込むにつれて、その素晴らしさに夢中になってしまう。暗黒(ハ短調)から光明(ハ長調)へというスタイルが、ベートーヴェンの『運命交響曲』と似たカタルシスが得られることもあり、人気曲になっている。

ジュリーニとロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団による演奏は、遅めの堂々たるテンポと太い旋律線、特に総奏時の圧倒的な推進力は、他の追随を許さない。
イタリア人指揮者らしく、辛口ながらよく歌うメロディ、随所で聴かれるティンパニとトランペットによる鋭い打ち込みなど、聴きどころ満載である。

ロス・フィルの音色は決して最高とは言い難いが、すみずみまでよくトレーニングされていて技術的には申し分ない。

1980年当時の、このコンビによる演奏(ベートーヴェンやシューマンなど)は、どれも素晴らしい。

【お薦め盤】
ブラームス:交響曲第1番
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、ロスアンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団(グラモフォン)
1981年録音

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マニャール 正義の賛歌

フランス近代の作曲家アルベリック・マニャール(1865~1914)は、フランク亡き後のフランスの代表的なシンフォニストである。

パリ音楽院でマスネに作曲法を学ぶが、卒業後、ダンディに4年間師事し、厳格な書法を学んだことが彼の作曲家としての方向性を決定づけることになった。

彼の作品は、フランスの作曲家でありながら、ドイツ後期ロマン派の影響の下、古典的な形式に基づいて書かれており、「フランスのブルックナー」とも呼ばれたほど。ベートーヴェンのように、作品の精神性を重んじた彼は、自分の作品にも厳しく、生涯に21の作品(そのほとんどが自費出版)しか残さなかった。

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今回取り上げる『正義の賛歌(作品14)』は、1894年、フランス軍内で起こった冤罪事件として有名なドレフュス事件を扱った管弦楽曲で、真面目で正義感の強かった彼の性格が表れたかのようなドラマチックな展開は、聴く者の心を熱くさせる。1903年1月の初演の際は、聴衆の熱狂的な歓迎を受けた。

冒頭、いきなり事件現場に放り出されたかのようにフォルティッシモで奏される第1主題、特に21小節目からヴァイオリンによる「理不尽な出来事に、怒りを押さえ切れない」感情を表す旋律はきわめて印象深い。それにクラリネットによる静かな祈りのような第2主題が続き、以降、曲はさまざまに展開する。終盤になると、曲は長調(ロ短調→ロ長調)に転じ、金管楽器が高らかに勝利のコラールを響かせ、その喜びを弦が引き継ぎ、美しく穏やかな光の中、曲は閉じられる。

演奏時間はおよそ15分

CDでは、マニャールの作品を精力的に取り上げ、再評価のきっかけをつくったプラッソン盤が、曲に深く共鳴した素晴らしい演奏を聴かせてくれる。

なお、マニャールには49歳の時、生涯最大の悲劇が訪れる。

1914年、第1次世界大戦が勃発。フランスとドイツも間に戦争が起こったため、彼は、妻と子どもを避難させ、バロンの邸宅を守りつつ作曲を続けていたところに、ドイツ兵が敷地内に侵入してきたため、銃を取り応戦。2階の窓から発砲して2人の兵士を殺害するも、銃撃戦の末、彼も射殺される。そして、屋敷に火が放たれ、歌劇『ヨランド』の総譜や最後の作品『12の音楽詩』(22番目の作品になるはずだった!)をはじめとする貴重な楽譜が、永遠にこの世から消え去ってしまったのである。

【お薦め盤】
ミシェル・プラッソン指揮、トゥールーズ市立管弦楽団(EMI)

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【追記】
youtubeに音源が掲載されています。


マルトゥッチ ノットゥルノ(夜想曲) 

近代イタリアの作曲家といえば、まずヴェルディやプッチーニがあげられるが、コアなクラシック音楽ファンにとって、ジュゼッペ・マルトゥッチ(1856~1909)の存在を忘れるわけにはいかない。

幼少のころから、音楽家であった父の下で英才教育を受け、天才ピアニストとして活躍。20歳代半ばにはナポリ音楽院の教授に就任するなど教育者としても活躍した。主な弟子には、レスピーギがいる。

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彼は指揮者としては、ワーグナーの楽劇を積極的に取り上げたが、作曲家としては、交響曲や協奏曲をはじめとする「絶対音楽」に最高の価値を求め、創作活動に取り組んだ。大指揮者トスカニーニは、彼の熱心な信奉者であり、作品の紹介に協力を惜しまなかったことは有名である。

この『ノットゥルノ(作品70の1)』は、1888年頃にピアノ曲として書かれたものを、後にオーケストラ用に編曲した作品。
短い序奏に引き続き、弦楽合奏による表情豊かで哀愁を帯びたテーマは、イタリア人らしい歌心に溢れており、そのまま歌詞を付けて歌われてもおかしくないくらいである。後半、テーマがオクターブ上で戻ってきて盛り上がりをみせる瞬間には、心を揺さぶられずにはおかない。

演奏時間は約8~9分

リッカルド・ムーティ指揮による名演もあるが、曲の素晴らしさを教えてくれたCDに敬意を表して。

【お薦め盤】
フランチェスコ・ダヴァロス指揮、フィルハーモニア管弦楽団(ASV)

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【追記】
演奏は異なりますが、youtubeに演奏がアップされています。(2009年12月5日加筆)

2004/08/16

アシュケナージのラフマニノフ『交響曲第2番』

ラフマニノフの『交響曲第2番ホ短調(作品27)』は、僕の大好きな交響曲である。

演奏会でこの曲が取り上げられるときは、プロアマ問わず、時間と距離の許す限り、聴きに出かけることにしているが、大掛かりな曲であるためか、演奏される機会はそれほど多くはない。しかし聴くたびに心が動かされる作品である。

曲は、第1楽章冒頭から、ラフマニノフ特有の連綿と続く美しいメロディーが、押し寄せる波のように奏でられる。劇的な曲運びや演奏効果満点の管弦楽法(特にヴィオラの扱いが印象的)など、すべてにおいて理想的と言っても過言ではない。聴いた後に味わえるカタルシス効果も最高だ。

これまで僕が接した実演では、フェドセーエフが指揮するモスクワ放送交響楽団の演奏が特に印象に残っているが、録音では、何と言っても、アシュケナージがコンセルトヘボウ管弦楽団を指揮したものがダントツに素晴らしいと思う。

第1楽章の序奏部から、弦がすすり泣き、管が吼(ほ)える。アシュケナージの曲に対する共感は尋常ではないと思わせる。他にも、第3楽章アダージョで、ヴァイオリンのさざなみに乗って20小節以上続くクラリネットソロの涙が出るほど美しいモノローグ。終楽章の第2テーマのこの上ない高揚感など、全編1時間にわたり聴きどころ満載である。

プレヴィンやマゼール、ヤンソンス盤など、名盤とされる数多くのCDと比べても、最も熱く感動的な演奏であり、広くお薦めしたい。

【お薦め盤】
ラフマニノフ:交響曲第2番
ウラディーミル・アシュケナージ指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(ロンドン)

1983年録音

Rachmaninovsymcd


ハチャトゥリアン 組曲『仮面舞踏会』

アラム・イリイチ・ハチャトゥリアン(1903~1978)は、アルメニア(旧ソビエト)の国民的作曲家であり、ショスタコーヴィチやプロコフィエフとともにソビエト連邦時代の3大作曲家のひとりとして知られている。

Khachaturian

地元コーカサスの民族色を濃厚に取り入れた作風で知られ、バレエ組曲『ガイーヌ』『スパルタクス』や3曲の交響曲、ピアノ・ヴァイオリン・チェロそれぞれの協奏曲などが有名である。

この『仮面舞踏会』も、そうした作品のひとつであり、1940年、作曲家37歳のときに4幕の劇音楽として作曲されたものを、後に本人により5曲の管弦楽組曲に編曲。初演当時から大きな評判を得たもの。

帝政ロシアの退廃的なイメージを彷彿とさせる第1曲「ワルツ」からユーモアとスピード感にあふれた終曲「ギャロップ」まで、名曲揃いであるが、個人的には、第2曲「夜想曲」においてソロヴァイオリンが奏する、魅惑的なメロディに強く心惹かれる。

演奏時間はおよそ16~18分

【お薦め盤】
ネーメ・ヤルヴィ指揮、スコティッシュ・ナショナル管弦楽団(シャンドス)

Khachaturianmasquerrade

【追記】
youtubeに数多くの映像が掲載されています。(2010年3月29日加筆)
※ほとんどは第1曲「ワルツ」ですが・・・これは第2曲「夜想曲」です。

2004/08/15

C.P.E.バッハ チェロ協奏曲イ長調

「音楽の父」と呼ばれるヨハン・セバスチャン・バッハの次男であるカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714~1788)は、バロック音楽と古典派音楽の橋渡しの役目を果たすとともに、古典派音楽の基礎を築いた作曲家として、音楽史上重要な位置を占めている。

Cpebach

その作風は父とは異なり、一言で言えば華やかで明快。美しく親しみやすい彼の音楽は幅広い人気を獲得し、生前は父をしのぐ名声を得た。しかし、当の本人は、「自分が今あるのは父のおかげ」として、当時、評価が十分でなかった父の名声を高めるための努力を惜しまなかった。

性格は父親譲りの頑固者で、長年、プロイセン王国のフリードリヒ大王の専属音楽家として仕えたにもかかわらず、王とはたびたび衝突を繰り返し、不遇であったといわれている。

また彼は、クラヴィーアをはじめとする鍵盤楽器の名手としても知られ、これらの楽器のための作品を数多く残したが、とりわけ、1753年に発表した教則本『正しいクラヴィーア奏法への試論』は、音楽家としての彼の名声を確固としたものにするとともに、ベートーヴェンをはじめとする後世の作曲家や教育者に多大な影響を与えた。

さて、今回ご紹介する作品は、3曲残されている独奏チェロと弦楽合奏のための協奏曲の中で最もよく知られる『チェロ協奏曲イ長調(Wq172、H439)』。特に、第3楽章アレグロ・アッサイでは、冒頭から流れ出るように提示される華麗な主題が魅力的である。聴き手を、たちまちに虜にしてしまうエレガントな響きの世界! まさに彼の真骨頂といえる名曲だと思う。
ちなみに『チェンバロ協奏曲イ長調(Wq29)』は、同一曲である。

作曲年は1753年、演奏時間は、およそ20分

【お薦め盤】
ユリウス・ベルガー(Vc)、ジャック・マルティン・ヘンドラー指揮、ダラルコ室内管弦楽団(ebs)

Cpebachcd


【追記】
youtubeに演奏が掲載されていますが、お薦め盤の華やかな演奏とは異なり、オリジナル楽器による、かなり刺激的な演奏になっています。(2009年2月1日加筆)

シノーポリ&ウィーン・フィルのシューマン『交響曲第2番』

まったくもって素晴らしい演奏である。

20年以上前、ちょうどCDというフォーマットが出始めのころ。それまでLPレコードを蒐集していた僕は、CDへの興味はそれほどでもなかった。小学校のころからLPに慣れ親しんできた者としては、カセットテープにも似た、小さなプラスチックケース(傷がつきやすい)に入った味気ないものを買う気はなかった。しかも、当時のCDの多くは輸入盤で1枚4千円以上したし、プレーヤーも軒並み10万円以上ではなかったか。

だが、やがて5万円を切る金額でCDプレーヤー(確か日立のローディ製)が登場したことで、さすがの僕も購入する気になり、試しに1枚買ってみようと、いつも通っているレコード店で、特に思い入れもなく購入したCDがこれだった。

聴いてみて、その素晴らしさに心から感動した!
もちろんCDの音もよかったが、何よりその演奏の集中力や熱さに完璧にやられた。それまで、シューマンの交響曲といったら、『春』か『ライン』しか興味がなかった。もちろんこの『第2番』も、何度か聴いたことはあったが、特に感慨はなかった。

Schumann

しかしこの演奏、第1楽章のソステヌート・アッサイの序奏から漂う緊張感。主部に入る前の25小節目から閃光のように刺し込む第1ヴァイオリン。遠心力でぐいぐいと勢いを増し、熱を帯びる音楽(しかし、その熱は青色に見える)。これは主部に入ってからも同様で、一種異常ともいえる緊張感と圧倒的な迫力で、耳を、そして心を釘付けにする。

第2楽章のスケルツォも圧巻である。ヴァイオリンの無窮動感、特にコーダにおける畳み込むような追い込みには唖然として言葉もない。

第3楽章はうって変わって、悲痛なアダージョの歌。この曲を作曲していた当時のシューマンは半ば病気だったというが、まさに彼の心情が反映されている印象。しかし何とも美しい・・・。

第4楽章はモルト・ヴィヴァーチェで、苦難を乗り越えた作曲者の喜びの音楽が、第1楽章冒頭のファンファーレ動機によって高らかに歌われる。

このシノーポリ&ウィーン・フィルの演奏との出会いによって、シューマンの『第2交響曲』は、僕のもっとも愛聴する作品のひとつになるとともに、LPレコードからCDへ、蒐集の対象を替える契機となった。

この録音の登場で、この作品に対する世間の評価が確実に変化した。演奏会や録音を問わず、この曲を取り上げる指揮者たちに与えた影響は計り知れないものがある。作品の評価を覆すほど優れた演奏を届けてくれたシノーポリ、そしてウィーン・フィルに心から敬意を表したいと思う。

【お薦め盤】
シューマン:交響曲第2番
ジュゼッペ・シノーポリ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(グラモフォン)
1983年録音

Schumanncd


フォーレ ラシーヌ讃歌

フランス近代の大作曲家ガブリエル・フォーレ(1845~1924)について語ることは、僕にとって重い課題である。彼の音楽史に残した偉大な功績は、ここで語り尽くすことはできない。あえて作品についてのみ記させていただく。

Faure

およそ80年の生涯で、室内楽曲、ピアノ曲、歌曲を中心にあらゆる分野にわたり、数多くの傑作を残しているが、その作風はきわめて中庸、否、むしろ地味で、声高に何かを主張するわけでも、世間の関心を引こうとするわけでもない。しかし作品の持つ美しさは限りなく、宗教的であり官能的でもある。

僕も、これまでの人生において、『夢のあとに(作品7-1)』や『レクイエム(作品48)』をはじめ、折々に彼の作品に心を癒され、励まされてきたと思う。本当に感謝している。

今回ご紹介するのは、1865年、彼が20歳のときに音楽学校の卒業作品として作曲したオルガンと混声四部合唱のための『ラシーヌ讃歌(作品11)』である。

フランス古典文学の大家、ジャン・ラシーヌの詩に基づいて、神への敬虔な祈りを歌っている。三連音符の伴奏に乗って、心を洗われるような美しい旋律が歌われる。穏やかで温かい感情に満ちあふれた若き日の傑作である。

彼は亡くなる2日前、2人の息子を呼び寄せ、次のような遺言を残している。

私がこの世を去ったら、私の作品が言わんとすることに耳を傾けてほしい。結局、それがすべてだったのだ・・・。心を悩ましたり、深く悲しんだりしてはいけない。私はできる限りのことをした・・・後は神の思し召しに従うまで・・・(中略あり)

演奏時間はおよそ5分

【お薦め盤】
ジョン・オールティス指揮、グループ・ヴォーカル・ド・フランス(EMI)

Faurecd

【追記】
youtubeにも、多くの音源が掲載されています。(2009年2月1日加筆)
※演奏は管弦楽伴奏版です。


2004/08/14

貴志康一  ヴァイオリン協奏曲

日本人が生み出した初の本格的ヴァイオリン協奏曲は、大阪が生んだ夭折の作曲家、貴志康一(きし・こういち 1909~1937)が1935年、25歳の時に、ドイツのベルリンで作曲、初演された。

Kishi

優れたヴァイオリン奏者でもあった貴志らしく、さまざまな超絶技巧が採り入れられているが、西洋音楽の本場で日本の伝統音楽を試みようという意図もあり、曲全体を流れる雅(みやび)で華やかさを感じさせる日本情緒が素晴らしい。

伝統的な3楽章形式、演奏時間は約35分

第1楽章 アレグロ・モルト
広重などの風景画を思わせる色づかいと、見通しのよい華麗さが印象的な楽章。
中間部において、独奏ヴァイオリンのG線で奏でられるヨナ抜き音階の旋律は、哀しくも美しい。この旋律が短調から長調へ、そしてまた短調へと転調していくところが聴きどころである。

第2楽章 クワジ・アンダンテ
霧に煙る竹林の風景を彷彿とさせるような耽美的な楽章。
終盤のカデンツァで独奏ヴァイオリンが完全5度(A-E)による重音を響かせる瞬間は、黄金が輝くようなまぶしさを感じさせる。

第3楽章 モルト・ヴィヴァーチェ
和洋それぞれの部分が交互に組み合わされたような展開を見せる楽章。
ヴァイオリンの超絶技巧が次々に繰り広げられる。
個人的には、楽想が十分に整理しきれておらず散漫な印象があり、思い切ったカットを施した朝比奈盤を好む。

LPレコードでは、上記の辻久子の独奏、朝比奈隆指揮、大阪フィルの演奏(私家盤)があったが、CDは現在のところ次の1種類しかない。そろそろ新たな録音の登場を望みたいところだ。

【お薦め盤】
数住岸子(Vn)小松一彦指揮、東京都交響楽団(日本ビクター)

Kishiviolinconcert


【追記】
youtubeに演奏がアップされていました。(2009年2月1日加筆)
※第1楽章の冒頭から中間部前まで

2004/08/09

エルガー ソスピーリ(ため息)

近代英国の作曲家エドワード・エルガー(1857~1934)は、40歳をすぎるころまでは、小さな都市の音楽教師で、ほとんど注目されなかったが、行進曲『威風堂々第1番』をはじめとした作品により、国民的作曲家としての地位を確立し、1904年、国王エドワード7世からナイトに叙される。

Elgar

作曲家として絶頂期を迎えていた1913年に英国のレコード会社グラモフォンから、録音用のための小品の作曲を依頼される。そして翌年に完成したのが、この『ソスピーリ』という作品である。

作曲当時は、世界大戦の直前であり、どちらかといえば戦意高揚の音楽が求められていたであろう時期に、エルガーは、ある種、真逆ともとれる荘厳で沈痛な曲調の曲をつくった。ソスピーリとは、イタリア語で「ため息」という意味で、当初の計画では、フランス語の「愛のため息」という題名になる予定だったらしい。

作曲中には、楽譜に「不在」という仮題を記していたとも伝わることから、作曲中に何か、彼の心に悲しい出来事が起こったのではと推測される。それは忍び寄る戦争の予感なのか、親しい人の死なのか。いずれにせよこの曲は、終始、ハープ、オルガンを伴った弦楽合奏により、内省的で痛切な歌が奏でられる。しかしそれは、とてつもなく深く美しい。

演奏時間は約5分

【お薦め盤】
ジェフリー・テイト指揮 ロンドン交響楽団(EMI)

Elgarsospiri


【追記】
youtubeに動画がアップされていましたので、ぜひご覧ください。※演奏は異なります。(2009年12月5日加筆)


2004/08/07

グラズノフ バレエ音楽『ライモンダ』

ロシアが生んだ偉大な音楽家のひとりであるアレキサンドル・グラズノフ(1865~1936)は、幼少期から神童と呼ぶにふさわしく、飛び抜けた才能を持ちあわせていたが、作曲家としてはチャイコフスキーやリムスキー=コルサコフらに比べ、いまいち知名度が低いのが残念である。

しかし、ペテルブルク音楽院の院長をはじめとして、ロシア(ソビエト)の音楽界に果たした功績はきわめて大きいものがあり、多くの若手作曲家の作品の初演において指揮を行ったことでも知られている。ちなみに、音楽院時代の最も優秀な弟子にショスタコーヴィチがいる。

Glazunov

今回取り上げる『ライモンダ(作品57)』は、名振付師であったプティパの依頼により、1897年に書かれた3幕物のバレエ音楽で、彼の作品の中でも、とりわけ詩情豊かな旋律に溢れた曲として、クラシックバレエの世界でも好んで取り上げられる作品のひとつとなっている。特に、第1幕の「ロマネスカ」や「間奏曲」で聴ける音楽は、夢のように美しい。

名指揮者ヤルヴィ指揮による演奏は、残響豊かなホールの響きと相まって、きわめてロマンティックである。

【お薦め盤】
ネーメ・ヤルヴィ指揮、スコティッシュ・ナショナル管弦楽団(シャンドス)

Raymonda


【追記】
名曲のため、youtubeに映像が多数掲載されています。(2010年3月29日加筆)
※「第1幕の間奏曲」(演奏は異なります)


ロシアの巨匠オイストラフによるヴァイオリン演奏も名演です。


2004/08/06

ディーリアス 春初めてのカッコウを聞いて

イギリス生まれの作曲家フレデリック・ディーリアス(1862~1934)には、室内楽曲や声楽曲をはじめ、多くの優れた作品があるが、僕にとっては、この小管弦楽のために書かれた『春初めてのカッコウを聞いて(英語名:On hearing the first Cuckoo in Spring)』をもって第一としたい。

Delius

私事ではあるが、20年ほど昔、英国を旅行した際、ホルストやヴォーン・ウィリアムスなどの音楽をカセットに録音し持参した。
レンタカーを借りて、イギリスの各地を巡ったことは良き思い出だが、その車の中で流れてきたこの作品が、何と自然や町並みにぴったりだったことか!

まず、冒頭に弦楽器で分奏されるC△7の和音。この「ディーリアス・マジック」と呼ばれる清浄な空気感を思わせる音の響きは、形容しがたいほど素晴らしい。
第1主題は、音の動きは単純だが、強弱が細かく制御されている。続いて、ノルウェー民謡に基づく第2主題が示された後、クラリネットによるカッコウの声が聞こえてくる。
ベートーヴェンやマーラーにも同様の試みがあるが、ディーリアスのものは、遠く森の中から聞こえてくるような遠近感を、より感じさせる。

作品は全編にわたって、清らかで美しい自然とともに、カッコウの鳴き声を聞いた作曲家の心象風景を描き出す。聴いている者の心を穏やかに、そして幸せにさせる美しい音の織物である。

演奏時間はおよそ7分

【お薦め盤】
サー・トーマス・ビーチャム指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(EMI)

Delius_cockoo


【追記】
演奏は異なりますが、youtubeにこの曲が掲載されています。(2010年3月29日加筆)

藤掛廣幸 パストラル・ファンタジー

人は誰でも、その生涯において数多くの音楽にめぐり合うが、「運命(宿命)の一曲」を挙げることができる人はどれくらいいるのだろうか・・・。幸運にも僕にはあるのだ。今回は、それについて述べてみたい。
少々長くはなるが、お付き合いいただければ幸いである。


その作品は、岐阜県出身の作曲家・指揮者である藤掛廣幸(ふじかけ・ひろゆき 1949~   )氏によってつくられた。

氏は、これまでにオーケストラやマンドリン、吹奏楽曲をはじめ、オペラやミュージカルに至るまで、数多くの作品を発表し、高い評価を得る一方で、シンセサイザーやコンピューターの可能性にいち早く着目し、「ソロ・オーケストラ」と名付けられた電子楽器を駆使して、演奏家としても幅広く活躍している。

1977年、エリザベート王妃国際音楽コンクールの作曲部門において、管弦楽のための『縄文譜』がグランプリを受賞し、日本人初の快挙として、当時、大きく取り上げられたことを記憶されている方もいると思う。詳しいプロフィールや作品については、作曲者のホームページに掲載されているので、そちらをご覧いただきたい。

氏は、僕が尊敬する音楽家のひとりであり、いくつもの作品を愛聴しているが、何よりも取り上げたいのは、マンドリンオーケストラのための『パストラル・ファンタジー』である。

僕が初めてこの曲を知ったのは、おそらくAMラジオ放送だったと思う。偶然、ラジカセのスピーカーから流れ出てきた美しいメロディーやハーモニーに耳を奪われた。少年だった僕にとって、おそらくそれは初めての「感動」という体験だったのだろう、心が大きくざわめくような感情とともに、男性アナウンサーが淡々と述べる「ふじかけひろゆき作曲、パストラル・ファンタジーでした」という声を、今でも鮮やかに思い起こすことができる。

その後、時系列は定かではないが、国際的な作曲賞を受賞したことを新聞のニュースで知るとともに、同郷であることにも親しみを持った。次いで、苦学して音楽を続けてきたことなどを語る写真入りのインタビュー記事を読んだ。また、FMラジオにゲスト出演された番組を聴き、司会者と即興演奏について話されていたことなどが記憶に残っている。

また、これも偶然なのだが、テレビ番組で「青少年音楽祭」におけるジュネス・ミュジカル・マンドリン・オーケストラの演奏を観て、慌ててラジカセをテレビの前に持ってきて録音した記憶がある。(そのテープは長い間、僕の大切な宝物だった)

ここまで重なれば、もはや単なる「偶然の出来事」で片付けることはできないのかもしれない。

それにしても、何という素晴らしい曲なのだろう。 「天才の作品」としか言いようがない。何度聴いても魂を揺さぶられる。この曲は僕にとって、まさに「運命の一曲」であり、モーツァルトやベートーヴェンなどの名曲に並ぶ、いやそれ以上の存在なのだ。


【曲の解説】
ニ短調 4分の2拍子、三部形式にしたがう。

題名の「パストラル・ファンタジー(Pastrale Fantasy)」とは、作曲者によると「田園的な叙情を歌う」といった意味を表しているとのこと。1975年、東海学生マンドリン連盟岐阜大学ブロック(岐阜大学・椙山女学園大学)の委嘱により作曲、同年8月初演。

アンダンテの冒頭、童謡のような主題がマンドリンとマンドラによって静かに提示される。このテーマは大きく分けて2つの部分からなり、いずれも哀愁を帯びた美しいものである。その2つが繰り返されながらひとつの頂点が築かれる。その後、夢見るような経過句を経て、フォルティッシモによる総奏で主題が還ってくる部分は、感動で言葉も出ないほどである。曲が静まりかけると同時に、低弦に荒々しいモチーフが現れ、曲は中間部に突入する。

アレグロ・マ・ノン・トロッポの中間部はフーガの形式が用いられているが、先ほどのモチーフが、きわめて重要な役割を果たす。
まず、マンドリンがフーガ主題を提示し、マンドラがそれに応じる。低弦部が加わると一気に音楽が高揚し、嵐のような頂点を迎える。この部分は、マンドリンオーケストラの音楽になじみの薄い聴衆にとっては、既成概念が打ち砕かれるほどの衝撃を与えられることになるだろう。また、後半部(練習番号Y~)のシークエンスは、もはや神業としか形容のしようがない。

そしてフォルティッシモで再現される冒頭主題・・・。コーダでは、中間部のモチーフも加わり、ニ短調からニ長調に転調し、圧倒的な迫力のうちに曲が閉じられる。

言葉では、うまく言い表すことができないのがもどかしい。ぜひ一度、演奏(できれば実演)を聴いていただければ、決して僕の独りよがりではないことを実感していただけるはずである。

演奏時間はおよそ15分


【お薦め盤】
平光保指揮、岐阜シティマンドリン合奏団(Voicelle)

Fujikakecd


【追記】
youtubeに演奏が掲載されていますので、ぜひご覧ください。(2009年12月1日加筆、2011年2月17日修正)

ジョージ・ウィンストン サンクスギビング

僕は、クラシック音楽以外の音楽もよく聴く。というか、基本的にジャンルにはこだわっていない。音楽を好きになったきっかけがクラシック音楽であり、その後も聴く機会が多いというだけだ。

僕は、ピアノを弾くことが時々ある。子どもの頃から習っていたわけではないので、キャリアの大半が自己流であり、華麗に鍵盤を操れることなどできるわけもない。弾く曲は圧倒的にポップスや、いわゆるニューエイジ系の音楽だ。

ジョージの曲は、大好きである。彼のCDは最近のまでほとんど全部持っているし、今では作曲者の意向により、手に入らなくなった楽譜集(「オータム」)も20年以上前に幸運にも!購入し、持っている。昨年は長年の夢だったコンサートにも行くことができた。

お薦めの曲はたくさんあるが、もっともよく聴き、演奏する曲のひとつがこれ。
アルバム「ディセンバー」から第1曲『サンクスギビング』・・・

December

サンクスギビングとは「感謝祭」のこと。アメリカでは11月の第4木曜日にあたるので、アルバムのタイトル「ディセンバー(12月)」から考えると、全体の導入としての位置づけと考えて良いのだろう。

曲は、Em→Am→D→G△7→C→B7の循環コードを基本にして、右手が即興的にメロディーを歌う。
コンサートでのジョージは、CDの演奏とは全く異なり、原曲の姿をとどめないほどの即興的な演奏を行うことで知られるが、この曲も例に漏れず、ライブでは、このコード進行のみに従い、演奏は自由きわまりない。

静謐(せいひつ)で、美しい祈りのような珠玉の作品。

2004/08/04

リヒャルト・シュトラウス 交響曲ヘ短調

この作品は傑作である。

僕はリヒャルト・シュトラウスの初期の作品に興味があり、この曲の存在はかなり以前から知っていた。

作品番号は「12」、これが重要である。あのホルンの名作として広く知られる『ホルン協奏曲第1番(作品11)』より後の1884年、作曲家20歳の作品なのだ。この交響曲は、たまに「交響曲第2番」とも呼ばれるが、それはさらに若書きの『交響曲ニ短調(AV.69)』があるから。(これもなかなかの力作だが、習作の感は否めない)

Richard_strauss

以前より、『チェロ・ソナタ(作品6)』や『ヴァイオリン協奏曲(作品8)』を愛聴していた僕は、「きっと傑作に違いない!」と脳内で勝手に妄想をふくらませていた。

そしてついに!長年待った甲斐あって、マルコポーロレーベルから待望のCD(ハラース指揮、スロヴァキア・フィル)が発売され、さっそく購入し聴いてみた。そして、想像していたとおり(いや、それ以上)の素晴らしい作品に大満足。特に第2楽章スケルツォの楽想の新鮮さや終楽章アレグロ・アッシ・モルト・アパッショナート(非常に速く、きわめて情熱的に)の主題のかっこよさにしびれた。

リヒャルト・シュトラウスの曲としては、後期の作品より取っつきやすく親しめるし、弱冠20歳の作品とは思えない熟練した曲運び、充実感がある。なお、この交響曲を聴いたブラームスは、賞賛の言葉とともに、作曲上のいくつかの点についてアドバイスをしたと伝えられている。

上記のハラース盤以降、CDがいくつか発売されていて、ネーメ・ヤルヴィ盤(シャンドス)の好演もあるが、総合的にはこの若杉盤が最も優れていると思う。

演奏時間は約50分

【お薦め盤】
若杉弘指揮 東京都交響楽団(日本コロムビア)

Rstrauss_op12

この作品については、いつか日を改めて採り上げてみたい。


【追記】
youtubeに音源が掲載されました。(2011年2月17日加筆)
※演奏者は異なります。

武満徹 海へⅢ

日本を代表する現代作曲家である武満徹(たけみつ・とおる 1930~1996)による、晩年の傑作のひとつ。

Takemitsu

武満は、楽器の中でもフルートやハープの音をとりわけ好んでいたらしく、その積極的な活用は彼のオーケストレーションの特徴でもあったし、死の間際、東京都奥多摩の別荘で作曲の筆を進めていたという協奏曲も、これらの楽器を独奏とするものだった。

この『海へ(Toward the SEA)』という作品は、3つのバージョンがある。

 Ⅰ アルトフルートとギター (1981年)
 Ⅱ アルトフルートとハープ、弦楽オーケストラ (1981年)
 Ⅲ アルトフルートとハープ (1988年)

原則、編成が異なるだけであるが、それだけ作曲家の思い入れが強いということなのだろう。僕は、とりわけⅢ(アルトフルートとハープのための)を好む。

曲は、「夜」「白鯨」「鱈岬」の3曲から構成され、海(SEA)を表す音名E♭(Es)・E・Aの3つの音を旋律に織り込んで曲は進むが、2つの楽器が醸し出す、にぶい光が差し込む深海のような雰囲気が、実に素晴らしい。

できればクジラのように優雅で、頑健な肉体を持ち、西も東もない海を泳ぎたい

これは、曲に寄せて記された武満の詩である。
※彼の葬儀の香典返し(テレカ)にも、この詩が掲載されていた。

演奏時間はおよそ11分

【お薦め盤】
オーレル・ニコレ(FL)、吉野直子(Hrp)(フィリップス)

Takemitsucd


【追記】
youtubeにライブ映像が掲載されました。(2009年2月1日加筆)
※第1曲「夜」です。


2004/08/02

アーン  珠玉のピアノ作品集

最近聴いたCDの中では、思いがけない掘り出し物。

フランス近代の作曲家レイナルド・アーンは、歌曲に素晴らしい傑作がいくつもあり、僕の宝物のひとつだ。しかし、その後、ピアノやヴァイオリンの協奏曲や室内楽曲を聴いてみたが、いまいち心に引っかからなかった。「サロン風の音楽」と言ってしまえばそれまでだが、もう一度聴いてみようという気にはならなかったのだ。

そのような状況の中での、この珠玉の作品集との出会い。彼は、こういった小品にこそ天才が発揮されるのかもしれない。僕が特にお気に入りの曲は、最初のワルツ集(1898) 『ワルツへの誘い』から第1曲。ショパンの影響が顕著だが、なんとも優雅で薫り高い音楽。

最近、10枚の新譜CDを聴いても、1枚も心を動かされることがないことがほとんどだったが、これは違った。

これだから、音楽遍歴はやめられない!

【お薦め盤】
アーン:ピアノ曲集
ファヴル=カーン pf (キング・インターナショナル)

Rhahn_piano_works


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